札幌が国際大会で初代王者に!順調に浸透する「ミシャスタイル」の申し子となるのは?

2018年02月12日 宇都宮徹壱

決勝でも好プレーを披露した福森は「監督の求める距離感が分かってきた」と手応えを語る。

札幌がパシフィック・リムカップの初代王者に輝いた。写真:宇都宮徹壱

 日本とMLSの4クラブが、太平洋の東と西からハワイに結集して対戦するパシフィック・リムカップの決勝が2月10日(現地時間)、ホノルルのアロハ・スタジアムで開催された。唯一のJクラブとして参戦し、準決勝でコロンバス・クルーに3−2で勝利していた札幌は、決勝でバンクーバー・ホワイトキャップスと対戦。結果は1−0で札幌が接戦を制し、パシフィック・リムカップの初代王者に名を刻んだ。
 
 札幌はこの試合の3日前、ホノルルでの合宿でバンクーバーと練習試合を行なっており、この時は0−4で敗れている。キム・ミンテによれば「僕は試合に出ていなかったんですが、その前のトレーニングがハードで疲れている選手が多かった」とのこと。しかし「この大会に照準を合わせてきた」とペトロヴィッチ監督が語るとおり、8日のコロンバス戦では、「ミシャスタイル」の片鱗を見せながらしっかり結果を残すことができた。
 
 決勝の相手であるバンクーバーは、フィジカルを前面に押し出しながら、縦にボールを入れてくるスタイル。コロンバスは、後方からしっかりビルドアップしてくるスタイルだったので、新監督の目指すサッカーとは相性がよく、前半と後半でまったく異なるメンバーを試す余裕もあった(この大会は10名までの交代が可能)。しかし決勝では、ワイドを活かしてのポゼッションはほとんど見られず、自陣で辛抱強くチャンスを待つ時間帯が続いた。
 
 札幌は39分のFKのチャンスに、福森が際どいキックを放つも、弾道は惜しくもクロスバー。前半の決定機はこの一度だけであった。後半に気を吐いたのはCFで起用された都倉。51分に右の三好から、71分には左の福森から、いずれも絶妙なクロスから頭で合わせるも枠を捉えるには至らず。しかし、そのゴールへの貪欲な姿勢が、最後に実を結ぶことになる。85分、福森のFKはいったん相手GKにブロックされるも、これを内村がヘディングで押し戻し、最後は都倉が確実に詰めてネットを揺らす。これが決勝点となった。
 
 かくして、ハワイで栄冠に輝いた札幌だったが、決勝戦の試合内容については評価が分かれるところだ。殊勲の決勝ゴールを上げた都倉は「僕が決めきれなかっただけで、チャンスはコロンバス戦と同じくらいあった。自分たちの守備が崩されることもなかった」と前向きな発言。一方、ゴールのきっかけを作った福森は「あれは自分で決めたかったし、セットプレーでなく相手を崩してからのゴールがなかった」と反省を口にしていた。
 
 この試合のMVPを挙げるならば、やはり福森だろう。セットプレーからの惜しいシュートが2本あったが、それ以上に評価したいのが積極的な攻撃参加。この日は3バックの左で起用されていたが、守備面での貢献度のみならず、タイミングのよい持ち上がりからたびたびチャンスを演出していた。本人も「監督の求める距離感が分かってきた。試合を重ねれば、もっと楽しくプレーできると思う」と手応えを感じている様子。札幌における「ミシャスタイル」の申し子となるのは、この左利きのDFなのかもしれない。
 
取材・文●宇都宮徹壱
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