【本田密着】システムの変更がさらなる危機を呼び込んだ

2014年05月08日 神尾光臣

トップ下で起用しようとしない指揮官の下での挑戦は……

こだわりのシステムを捨てたセ―ドルフ監督が、今度は本田にトップ下を任せようと“心変わり”する可能性は!? (C) Getty Images

 5月4日、本田圭佑の初めてのミラノダービー出場はお預けになった。
 
 本田が試合後にミックスゾーンを足早に立ち去るのはいつもの光景だが、この日は試合後にランニングを行なったため、ミックスゾーンに姿を現わす時間はいつもより遅かった。試合に出なかった選手がコンディションキープのため、試合後に走らされるのはさほど珍しいことではないが、やはりこの走りは試合で見たかったものだ。
 
 これまで本田は、本来のポジションではない右サイドとしてではあったが、定位置を確保していた。それを失うことになったのは、システムの変更によって攻撃的MFの枠が減らされたことが理由だ。
 
 クラレンス・セードルフ監督は就任から一貫して4-2-3-1にこだわっていたが、ダービーを迎えるにあたってついにポリシーを曲げ、4-3-1-2を導入した。直接の理由は「エルナネスやマテオ・コバチッチを3ボランチで封じるため」(セ―ドルフ)だったが、2トップへの変更はクラブの要望を受けてのものだった。
 
 セードルフの下では、本田以外にも、本来のポジションではないところでプレーさせられている選手が複数いた。一時期は5連勝したものの、選手のなかには采配や練習の進め方に不満を持つ者がいたとも伝えられており、ローマ戦の敗戦を機に、アドリアーノ・ガッリアーニ副会長とセードルフが会談を持った。
 
 フロントとの関係悪化から今季限りの解任も噂されていたセードルフは、ガッリアーニ会長を受け入れる。その結果、ボランチの3枚を、リッカルド・モントリーボ、ナイジェル・デヨング、そしてアンドレア・ポーリで構成。カカをトップの一角にして、トップ下には、1月の加入からここまでで4ゴールを挙げているアデル・ターラブトが起用され、本田はスタメンからはじき出された。
 
「(シルビオ・)ベルルスコーニ会長の好きなシステムで勝った。(カルロ・)アンチェロッティ監督の下でプレーしていた時代から、会長のお気に召しているものは承知している」
 
 1‐0で勝利したダービーの後、クラブの意向通りにして結果を残したことをアピールした指揮官は、「このロンボ(菱形)の中盤は、来シーズンも続ける」とも語っている。セードルフについては、その去就は微妙とも言われているものの、後任として有力視されているフィリッポ・インザーギもまた、プリマベーラでこのシステムを採用して戦っている。
 
 つまり確かなのは、ミランが今後も4-3-1-2で戦うということだ。本田にとっては、新システムでなら本来のポジションであるトップ下に戻れるという利点はあるが、問題はこれまでもセードルフが、本田のトップ下起用を避け続けてきた点にある。ある記者は言う。「セードルフは一度物事を決めたら、考えを改めようとしない。彼の下で本田がトップ下として使われることはないと断言できる」と……。
 
 今シーズンの残り2試合、どれだけチャンスが与えられるか分からないが、定位置奪還に挑む本田には、ワールドカップ、そして来シーズンにつながるパフォーマンスを期待したい。

文:神尾光臣

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 2014年1月、本田圭佑が新たなチャレンジを開始した。CSKAモスクワから、世界屈指の超名門クラブ、ACミランへ――。

「心の中の『リトル本田』に聞いた」との名言とともに、名門クラブの背番号10番を背負った本田。そのロッソネーロ(ミランの愛称で赤と黒の意)の日々を、現地在住のライター、神尾光臣氏が追う。


 
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