蘇った「22番」のサン・シーロ第二章――カカ|ミラン

2014年02月20日 神尾光臣

栄光を未来へ継ぐ架け橋として。

32歳のベテランは、4年ぶりに復帰した第二の故郷で、見事に復活を遂げた。取り戻したのは、サッカーへの愛だ。 (C) Getty Images

 度重なる怪我に泣かされ、ジョゼ・モウリーニョ監督(当時)の信頼を得られなかったレアル・マドリーでの日々。フィジカルコンディションだけでなく、サッカー選手としてもっとも大切なものまで、カカは失ってしまっていた。

「継続してプレーできず、サッカーを愛する気持ちを忘れていた」

 第二の故郷として、ずっと郷愁を抱きつづけていたミランへの復帰を決めたのは、愛する古巣で文字通り、やり直したかったからだ。

 ミランにとっても、カカはいつまでも愛おしい“息子”だった。2009年夏、経営難から泣く泣く手放したが、オーナーのシルビオ・ベルルスコーニ以下、クラブを取り巻くすべての人間が復帰を熱望していたのだ。

 サン・シーロ(ミランの本拠地)での第二章を開いた「22番」から伝わってくるのは、なにより“熱い心”だ。チームは不振に喘ぎ、マッシミリアーノ・アッレグリ監督が解任される危機的状況のなか、誰よりも走っているのが、間もなく32歳になるカカなのだ。以前はほぼ手を貸さなかった守備を懸命にこなし、カバーリングの範囲はサイドバックの裏のスペースにまでしばしば及ぶ。劣勢に追い込まれ、マリオ・バロテッリなど若い選手が見るからに集中を切らしても、カカだけは諦めずに戦い続ける。たしかにスピードは衰え、加速力抜群のドリブル突破は鳴りを潜め、ミスが増えた。だが、この献身ぶりが観る者の胸を打つ。

 アッレグリの後任に就いた新監督のクラレンス・セードルフも、引き続きカカを重用しているのは、5年前までミランで同じ釜の飯を食った親密さからではない。チームのために骨身を惜しまない、その献身を評価しているからだ。

「自分ももちろんそうだが、黄金時代を知るベテランとして、(カカには)若い選手たちにその精神を受け継いでほしい」

 セードルフはそう期待する。数年前の大リストラで、フィリッポ・インザーギやアレッサンドロ・ネスタ、ジェンナーロ・ガットゥーゾらベテランを一掃したチームには、ロッソネーロ(ミランの愛称)の精神を伝える伝承者がいなくなってしまった。カカは、その役割を期待され、本人にも覚悟がある。

 過去の栄光を未来へと継ぐ架け橋として――。「22番」の挑戦は、いま始まったばかりだ。
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