【番記者通信】24年間の落胆に終止符を打つ「至高の伝説」へ|リバプール

2014年04月26日 ジェームズ・ピアース

イスタンブールの奇跡の上を行く快挙になる。

残り3試合で勝点7を加算すれば、24年ぶりの戴冠が決まる。ロジャース監督と選手たちは、待ちに待った19回目の優勝をファンに届けられるか。 (C) Getty Images

 リバプールと戴冠の間にあるのは、「勝点7」。残り3試合を2勝1分けで乗り切れば、悲願のリーグ優勝が決まる。優勝自体は24年ぶりで、「プレミアリーグ」のタイトルは初となる。イングランド・リーグがプレミアリーグとして装いを新たにしたのは、ご存じのように92-93シーズンだ。
 
 優勝パレードの準備はまだ進んではいない。選手を乗せるオープントップのバスの手配も、もちろんまだだ。ただ、期待は大きく膨らんでいる。クラブOBでレジェンドのフィル・トンプソンが語る。
 
「優勝となれば、イスタンブールの奇跡(3点差を跳ね返し、決勝でミランを下した05年のチャンピオンズ・リーグ優勝)のさらに上を行く快挙になる。あのイスタンブールの夜は、特別な夜だった。だが、プレミアリーグ初制覇は、それよりもアメージングな出来事だよ」
 
 チャンピオンズ・リーグを制しても、FAカップとリーグカップを獲得しても、ファンの心が本当に満たされることはなかった。彼らが欲してやまないもの、それは19回目のリーグタイトルなのだ。
 
 惜しかったのは、08-09シーズンだ。ラファエル・ベニテス監督(現ナポリ)のチームは、優勝したマンチェスター・ユナイテッドと勝点4差の2位に入った。
 
 ロシアの大富豪、ロマン・アブラモビッチがチェルシーを買収してからは、それこそカネがモノを言う時代になり、パトロンに恵まれなかったリバプールは、荒波に揉まれるばかりだった。アラブの王族が莫大な資金を注ぎ込んだマンチェスター・シティが優勝した一昨シーズン、8位に終わったリバプールは勝点37という途方もない大差をつけられた。
 
 さすがのスティーブン・ジェラードも絶望感に苛まれ、優勝するには奇跡にでもすがるしかないと、2012年に出版した自伝に記している。
 
 今シーズンのリバプールに、奇跡が起きたのだろうか。いや、この快進撃は奇跡やフロックではありえない。その強さは、2年目の指揮を執るブレンダン・ロジャースの手腕の賜物であり、それに応えた選手たちの遂行力の賜物だ。彼らが見せるフットボールは息を飲むほどハイクオリティーだ。
 
 24年間の落胆に終止符を打つ優勝は、リバプールというクラブに語り継がれるどんな伝説よりも重みがある、「至高の伝説」となるだろう。
 
【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。
 
【翻訳】
松澤浩三
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事