ヴェルトンゲン一家はなぜ「古いトヨタ・カローラ」を大事にしているのか

2017年10月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

11月の親善試合ではハリルジャパンの前に立ちはだかる

ベルギー代表の歴代最多キャップ数を更新したヴェルトンゲン(左)。偉大なる先達、クーレマンス(右)も祝福に駆け付けた。(C)REUTERS/AFLO

 トッテナム・ホットスパー所属の左利きCB、ヤン・ヴェルトンゲンが偉大なる先達の記録を抜いた。10月10日、すでにワールドカップ出場を決めているベルギー代表は、予選最終節のキプロス戦に臨んだ。先発したヴェルトエンゲンにとっては、97試合目の国際Aマッチ出場。これはベルギー代表における歴代最多キャップ数で、1980年代に活躍したレジェンド、ヤン・クーレマンスの記録を27年ぶりに塗り替えた。
 
 名門アヤックス・アムステルダムの下部組織で英才教育を施され、19歳でトップチームデビュー。すぐさま定位置を掴み、2007年には20歳でA代表に初招集される。2012年夏から籍を置くトッテナムも含めて、プロキャリアにおいてほぼレギュラーとしてフル稼働してきた。そんなヴェルトンゲンをベルギーやオランダの人びとは、ディズニー映画の「ミスター・インクレディブル」を模倣し、「ミスター・ディペンダブル(高い信頼性を与える男)」と呼んで称えている。
 
 キプロス戦のあと、30歳のヴェルトンゲンはチームメイトに胴上げされた。米スポーツ専門チャンネルの『ESPN』はその紳士的な人柄と質素なライフスタイルを紹介しながら、ひとつのエピソードを掘り起こした。
 
 2015年のことだ。ベルギー代表の練習場に、小さなグレーの日本車が横付けされた。運転手はヴェルトンゲン、助手席には母親のリアさん。車から降りて二言、三言会話を交わしたのち、息子は代表チームの待つ宿舎へと立ち去って行った。
 
 すでにトッテナムで高収入を得ていたはずで、実家の母親にも高級車を買ってあげてもいいものだが……。車種は古い型のトヨタ・カローラ。リアさんが真相を明かす。
 
「我が家があの車を買ってからもう10年になるわね。まだヤンがプロフットボーラーになって間もない頃で、主人が購入したの。でも、その直後に父親は他界してしまった。ヤンは悲しみに暮れながら、毎日のようにあの車を磨いていたわ。『パパだと思って大事にするんだ』と言ってね。いまでも自宅に戻って来ては、よくカローラで連れ出してくれるのよ。もちろん、メンテナンスもヤンの担当よ」
 
 決して飾らず、奢らない彼の性格を物語る逸話だ。
 
 ピッチ上では冷静沈着な守備対応が光る"赤い悪魔"の中軸。11月14日には日本代表とベルギー代表の親善試合が行なわれる。ハリルジャパンの前に立ちはだかる歴戦のCBに、是非とも注目してもらいたい。
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