【本田密着】戦列復帰が待ち望まれる理由

2014年04月21日 神尾光臣

チームとしても欠場は痛恨だった。

右サイドで攻守に質と量を担保する本田は、戦術上重要な存在になっている。 (C) Getty Images

 左足の捻挫で故障者リストに名を連ねていた本田圭佑は、4月19日のリボルノ戦にも出場しなかった。18日の前日会見でクラレンス・セードルフ監督は、

「本田はこの午前中も別メニューで練習を行なった。だが、まだ起用できる状態ではない。来週には回復し、良い状態で戻ってこられるだろう」
 と説明した。

 もっとも、別メニューの練習と言っても、クラブ関係者によれば、ボールを使ったり、筋トレといった“練習”をしたわけではなく、「ミラネッロ(ミランのトレーニングセンター)に来て理学療法を受けた」とのことだ。故障してから、午前と午後の二度、フィジオセラピーを受けていると言う。

 とはいえ、間もなくピッチでのランニングを開始する予定で、4月25日の35節、アウェーのローマ戦には、セードルフ監督の言葉通り出場できるようだ。その翌週にはミラノ・ダービーが控え、シーズンが終わればブラジル・ワールドカップだ。実戦復帰を急ぐよりも、万全な状態への回復を優先させているのだろう。

 怪我で離脱するまで、良い流れで来ていただけに、それが途切れてしまったのは残念だった。チームとしても、本田の欠場は痛恨だった。右サイドで攻守両面に渡って働き、後方と前線を繋ぐバランサーとして機能していた本田は、戦術上重要な存在となっていたからだ。その力は必要とされている。

 本田が不在だったカターニャ戦(4月13日の33節)は1-0の辛勝だった。内容はいまひとつで、23分にリッカルド・モントリーボのミドルシュートで先制しながら、その後はかなり押されていた。カターニャ戦までの3連戦で保たれていた組織のバランス感がなく、全体が間延び。セードルフ監督も、
「パスの繋ぎが不正確で、ビルドアップの局面で良くなかった。攻守を分断させてしまい、相手にペースを握られてしまった」
 と反省していた。

 守備ではがっちりと2ラインをキープし、カウンターで攻めるという方向でセードルフはチームを固めている。そのためには、プレスやカバーリングを真面目にこなし、かつ技術とインテリジェンスを活かしてパスを繋ぐ本田の存在が重要なのだ。ステファン・エル・シャーラウィが怪我で長期離脱しているミランの攻撃陣で、攻守に質と量の両面を担保できる選手は他にいない。

 25日に対戦するローマは、堅守からスピーディーなサイドアタックを繰り出すスタイルで、ここまで2位と躍進している。そんな相手に、攻守分断はそれこそ命取りになる。その試合で本田が戦列に戻るのは、それだけで大きな意味がある。とりあえず、練習復帰に期待したい。

文:神尾光臣

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 2014年1月、本田圭佑が新たなチャレンジを開始した。CSKAモスクワから、世界屈指の
超名門クラブ、ACミランへ――。

「心の中の『リトル本田』に聞いた」との名言とともに、名門クラブの背番号10番を背負った本田。そのロッソネーロ(ミランの愛称で赤と黒の意)の日々を、現地在住のライター、神尾光臣氏が追う。
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