新天地でも暴れる野獣――ネグレド|マンチェスター・C

2014年02月19日 山中忍

付かつ離れずのアグエロと好連係を。

強力FW陣の中心が、新加入のネグレド。ペレグリーニ監督にもっとも重用されている。 (C) Getty Images

 今シーズンのマンチェスター・シティはゴールを荒稼ぎしている。リーグ戦での総得点は、1月末のトッテナム戦(5-1)で、2位で終えた昨シーズンの66得点を越えた。前線のキーマンを挙げれば、チーム最多の15ゴールを記録しているセルヒオ・アグエロではなく、移籍1年目にして、4人のFW陣でもっとも多くの試合に出場しているアルバロ・ネグレドだ。

 アグエロとの呼吸の良さは、開幕から間もない9月後半、初の同時先発でそのアルゼンチン代表FWにアシストを送ったマンチェスター・ダービー(4-1)でのプレーぶりから明らかだった。新顔のスペイン代表FWは「母国語が同じだから」と言うが、付かず離れず、つねに互いへのパスを窺う様子は、言葉を越えた意思の疎通を感じさせる。

 10月に入ると、今シーズンのプレミア最強コンビとの評判が立った。好例は8節ウェストハム戦(3-1)での一場面だ。ネグレドは、ゴールを背に受けると思われた足下へのパスをスルー。背後でアグエロをサンドイッチにしていたはずの敵CB2人は意表を突かれ、意図を読んでいた相棒が先制点を奪った。2トップは、11月上旬のチャンピオンズ・リーグ・CSKAモスクワ戦(5-2)で、ネグレドのハットトリックを含む5得点。チームは早々と決勝トーナメント進出を決めた。

 ネグレドは、母国で「野獣」の異名をとった強さと激しさに加え、正確なタッチと連係の巧さも備えている。味方にすればボールを預けやすく、リターンが期待できる新CF。中盤からすでに12ゴールを決めているトゥーレ・ヤヤも、その恩恵を受けている。アグエロとの縦のコンビで開幕を迎えたエディン・ゼコが、正パートナーの座を奪われたのも無理はない。

 利他的なネグレドは、実はゼコとの相性も悪くない。アグエロが欠場した1月、6試合で先発コンビを組んだ両者は7ゴールずつを記録。アグエロ離脱の危機ではなく、4冠の可能性が囁かれた。1月の全9試合で33得点を叩き出す一方で、8失点を喫したシティには、守備の不安が指摘される。だが、ペレグリーニは「攻めて勝つスタンスは変えない」と強調する。つまり、ネグレドは指揮官に頼りにされつづける。

 シティが国内外で頂点に立てるかは分からない。だが、脂が乗りきる28歳で、プレミアのレギュラーFWとしては安価な約28億円で移籍したネグレドが、シーズン終了時、「最高の買物」と言われていることは間違いないはずだ。
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