ワールドクラスの未来像を目指して――スターリッジ|リバプール

2014年02月19日 山中忍

「公私両面で自分を理解してくれる」指揮官の下で。

信頼を寄せるロジャース監督の下、天賦の才をついに発揮。イングランド代表でもエースの座をつかみつつある。 (C) Getty Images

「天性のフィニッシャー」

 リバプールのブレンダン・ロジャース監督は、ダニエル・スターリッジをそう評する。ゴール前に突進し、タイミングよく左足を振りぬいたシャープなゴール。その2分後、大きく跳ねたロングパスから、ループシュートでGKの頭越しに放り込んだゴール。プレミアリーグ23節、エバートンを4-0で粉砕したマージーサイド・ダービーでの2得点を目撃すれば、ロジャースの言葉に異論を唱える者はいない。

 しかも、今シーズンはリーグ得点王を競う量産ペース。23ゴールで得点王争いをリードする、ルイス・スアレスというワールドクラスが同じチームにいなければ、「エース」と呼ばれても分不相応ではないし、貢献度では引けを取らない。5年ぶりのトップ4どころか、24年ぶりのリーグ優勝を狙える今シーズンは、昨シーズン終盤の上昇ムードがあればこそ。その源は、昨年1月の移籍と同時にスアレスとの相性の良さを見せたスターリッジだった。4月後半にスアレスが例の噛みつき事件で10試合の出場停止処分を受けると、同期入団のフィリッペ・コウチーニョのサポートを得ながら、自身のゴールでチームの失速を阻止。処分が持ち越された今シーズンの開幕から6試合は、6得点で1か月無敗スタートを実現した。9月末のサンダーランド戦(3-1)でスアレスがプレミアのピッチに戻ると、早速、相棒の2ゴールを演出し、みずからもネットを揺らしている。

 結果として、2年前はチェルシーのベンチ要員だった24歳は、イングランド代表でのウェイン・ルーニーの相棒として、今夏のブラジル行きが確実と言われるまでになった。ロジャースに「感謝してもし切れない」と、本人は言う。レンタルでの武者修行先で、12試合8得点の活躍を演じて戻っても、チェルシーでは信用してもらえなかった。その点、新天地の指揮官は、マンチェスター・シティでのユース時代から注目してくれていた。ロジャースは、チェルシーでユースチームを率いていた当時のシティ戦で、16歳のスターリッジが披露したロングシュートを「天賦の才」を示す一例に挙げている。

 かつては怪我で調子とともに自信を失っていたが、曰く「公私両面で自分を理解してくれる監督」の下では別人のよう。約1か月半の欠場から復帰した21節ストーク戦(5-3)でのゴールは、開幕当初の6試合を上回る連続得点の皮切りとなり、ファンの間では「ワールドクラス目前」と言われ始めた。指揮官は「3、4年後が楽しみ」と言うが、攻撃的スタイルへの移行が進むロジャース体制2年目は、ゴールチャンスに事欠かない。トップ4が現実的な終盤戦、ワールドクラスの未来像を目指して、スターリッジはゴールを狙いつづける。
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