宮市を上回る躍進で――グナブリー|アーセナル

2014年02月19日 山中忍

優勝争いに不可欠なロールプレーヤーとして。

ウイングの貴重な戦力として台頭。ドイツ代表としてのブラジル行きに、ヴェンゲル監督は「可能性はある」。 (C) Getty Images

「ワールドカップのメンバー入りは可能」

 この発言を聞けば、アーセン・ヴェンゲルがいかに18歳の俊英、セルジュ・グナブリーを高く買っているかが理解できる。アーセナルの指揮官は、若きウインガーのブラジル行きを「可能性はかなりある」とまで言う。しかも対象となる代表は、父方の血を引くコートジボワールではなく、グナブリー自身が生まれたドイツなのだ。

 シュツットガルトのユースから引き抜かれたグナブリーは、ここ数年、アーセナルが力を入れてきた「ドイツ市場開拓」の成果の一部だ。契約は16歳になった2011年。だが、15歳で練習に招かれ、U‐16レベルの試合に出場した時点で、ヴェンゲルの首は縦に振られていた。スピードとテクニック、左右両刀のパスとシュート、視野の広さといった持ち味は、入団1年目の2軍戦でも確認できた。

 ただし、こうした特長は宮市亮と似通っている。今シーズン開幕当初、アレックス・チェンバレン、ルーカス・ポドルスキとウイングの主力が相次いで怪我に倒れたチームでは、プレミアリーグの出場経験が10分間しかなかったグナブリーではなく、宮市にチャンスが訪れるかに思われた。

 だが、軍配はグナブリーに上がった。宮市が「緊張した」と言う約10分間の今シーズン初出場を果たした同じ5節のストーク戦(3-1)で、グナブリーは10点満点で7点はつけられる約70分間を経験した。試合前のウォームアップで負傷したセオ・ウォルコットに代わる、突然のプレミア初先発。心臓の強さを含め、「通用する」というヴェンゲルの発言を裏付ける、素晴らしいパフォーマンスだった。翌週のスワンジー戦(2-1)では同点ゴールをマークし、アピールを強めた。

 ハイライトは、1月4日のFAカップ3回戦。トッテナムとのノースロンドン・ダービーで先発フル出場を果たし、完璧なタイミングでパスを送ったアシストを含む活躍で2-0の勝利に貢献した。優れた技術や感覚を発揮できる理由である「当たり負けしない強度」を、「10代には異例」と指揮官に称えられたグナブリーは、同時にウォルコットが膝を痛めて今シーズン中の復帰が絶望となると、トッテナム戦後の4試合でも先発で起用された。

 チェンバレンとポドルスキが戦列に戻った今後も、出場機会は得られるだろう。台頭したアウトサイドの戦力は、ヴェンゲルが「最終的な適所」と見る中盤中央でのチェンバレン起用や、駒不足を補う最前線でのポドルスキ起用を選択しやすくさせるのだから。優勝争いを続けるために不可欠なロールプレーヤーとして、グナブリーの躍進は続く。
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