苦しむ大久保嘉人に敵将は「やっぱり、うまいな。ただ、色々と思いながら…」

2017年05月29日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

中盤に下がってプレーした大久保はシュートゼロ。

甲府との一戦で、シュートゼロに終わった大久保。ストライカーとしての葛藤を続けている。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ13節]FC東京 1-1 甲府/5月28日/味スタ
 
「中盤に下がっても、やっぱり良い選手だな。前半はお手上げなところもありました」
 
 試合後、甲府の吉田達磨監督は相手FWの大久保嘉人のプレーについて、こう述べた。たしかに、ピーター・ウタカと2トップを組んだ背番号13は、互いに縦の関係を築きながら中盤に落ちてボールを捌く役割に徹していた。
 
 しかしこの日のFC東京は、5-3-2の布陣で中盤を締めたアウェーチームの守備に手を焼いた。ボールこそ保持していたものの、相手ゴールを脅かすまでには至らない。開始早々の先制点はCKからのもので、流れのなかでの攻め手を欠いた印象が残る。
 
 甲府の守備陣を中央で統一する山本英臣が「ブロックを固くして、(大久保選手が)ボールを欲しがって下がるようにし、P・ウタカを孤立させる狙いでやった」と言うように、相手の守備戦術にはまったFC東京の攻撃は、ほとんどの時間で停滞。その状況を打破するべく、大久保が下がり目の位置でゲームの組み立て役に回った格好だ。
 
 だが、「僕たちが彼(大久保)をどこで相手にするかという時に、中盤で彼がパスを出してくれたほうが、まだいい」と吉田監督が語るように、トップ下とも言える大久保は最前線でプレーをするよりも怖さがない。
 
 結局は大久保の奮闘もむなしく、FC東京は攻撃の形を見出せないまま90分を終えた。不甲斐ない出来にサポーターが猛烈なブーイングを浴びせたのも頷ける。
 
 J1屈指のFWである大久保が、この日はシュートゼロに終わった。新天地でどうやってゴールを奪うのか、いまだその形を模索しているように見える。
 
 苦しむ大久保について敵将は「(中盤と前線)どっちにいても良い選手。ただ、あれだけ得点を重ねていて、今日もクロスでフリーになるシーンはあり、さすがだなと思った」とストライカーとしての能力を称えた。
 
 しかし、「ただ…」と吉田監督は続け、「色々思いながらプレーしているんだなとは思います」と相手エースの立場を慮る言葉も残している。慎重な姿勢でコメントしていた敵将の目にも、今季鳴り物入りで加入したFC東京のエースは葛藤を続けているように見えるようだ。

取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト)
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