【浦和】万雷の拍手と歓声に、なぜサイドの刺客・駒井善成は戸惑いの表情を浮かべたのか

2017年04月27日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

AFC発表のマン・オブ・ザ・マッチを受賞。嬉しいけれど、一番欲しいのは——。

2、3点目をラストパスで演出した駒井。次週、浦和での“物語"が始まったアウェーでのFCソウル戦を迎える。写真:サッカーダイジェスト写真部

 [ACL GS第5節]
浦和レッズ 6-1 ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ
4月26日/埼玉スタジアム
 
 興梠のゴールで浦和が6-1とリードを広げた直後、試合終了を告げる主審の笛がこだまする。興奮冷めやらぬざわめきが埼玉スタジアムを包むなか、大会主催者のアジアサッカー連盟(AFC)が選ぶマン・オブ・ザ・マッチが発表される。
 
「URAWA REDS
Yoshiaki KOMAI!」
 
  観客席が再びどよめいた。そして次の瞬間、万雷の拍手が右ウイングバックとしてフル出場した駒井善成に送られた。

 この日の6ゴールは関根貴大、ズラタン、李忠成、ラファエル・シルバ(2点)、興梠慎三とアタッカー陣が決めていた。そのなかで、試合を決定づける18分のズラタンの2点目、43分の李の3点目のラストパスを放ったのが、背番号18の駒井だった。加えて最後までタフにサイドを走り続け、攻守両面で勝利に貢献した。
 
 駒井は驚きを隠せなかった。試合後の表彰セレモニー。スタジアムの電光掲示板には、駒井の「え、俺が?」と戸惑う表情が映し出された。するとそんな駒井を"ヒーロー"だと称える拍手とコールがサポーター席から起きた。
 
「ラファ(R・シルバ)が2ゴールを決めていましたからね。驚いたし、でも嬉しかったです。これからさらに活躍して、もっと獲っていきたいです」
 
 駒井は素直に受賞を喜んでいた。中央に切れ込むカットインから絶妙なスルーパスを放った2点目、"3人目"の動きで抜け出した3点目はいずれも、「普段の練習で何度もやっている攻撃パターン。だから僕らとしては特に驚きはない」と振り返った。
 
 ウイングバックは激戦区だ。関根、宇賀神友弥、菊池大介、平川忠亮、さらに怪我から復帰した梅崎司もいる。そのなかで駒井は不可欠な戦力として地位を固める。それだけに、やはりレギュラーへの想いは高まっている。
 
「悪い流れを変えるのが僕の役割でもある。全力でやるだけです。アピールしていくしかない。スタメンを取るためにも、チャンスを掴んでいきたい」
 
 そうチーム内の競争への想いを語る一方、「ただ…」と小脇に抱えたマン・オブ・ザ・マッチ受賞記念のトロフィーを一瞥して言った。
 
「嬉しいけれど、やはり優勝メダルのほうがいいかな」
 
 駒井は笑ったが、その視線は鋭かった。2大会連続の決勝トーナメント進出を決めた夜、背番号18がはアジアの頂点に向けて、力強い一歩を踏み出した。
 
【浦和 6-1 WSW PHOTO】圧巻ゴールショー。2007年以来のアジア制覇だ!

取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
 
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