王者・鹿島のレッスンで得た教訓――2-0からの逆転負けが清水にもたらすモノとは?

2017年03月20日 前島芳雄

鄭以外に点を取る選手がいないという懸念があった中で…。

鹿島戦は2-0からの逆転負け。王者の力を見せつけられた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

「2-0は1点取られるとひっくり返るということを、今日はまざまざと……」
 
 鹿島に2-3で逆転負けを喫した試合後、そう振り返ったのは、清水の小林伸二監督だ。71分に2点目を取るまでは、流れは明らかに清水にあった。だが、相手は昨年のJ1王者。J2では2-0から逆転されることはなかっただけに、あらためてJ1の恐さ、厳しさを味わされるゲームとなった。
 
 火曜日にACLのブリスベン戦を戦った鹿島は、2月18日のゼロックス・スーパーカップからACLの3試合も含めて4週間で8試合目。その疲労や、金崎夢生とレオ・シルバをベンチスタートにさせた影響もあって、エンジンのかかりが遅くなったのは間違いない。だが、それを差し引いても、清水は自信を持ってパスを回し、攻守の切り替えの速さで上回り、鹿島と対等以上に渡り合った。
 
 それでも球際の1対1では、やはり鹿島が一枚上手。選手同士が交錯してもつれ合いになったときに、最終的に鹿島の選手が足にボールを引っかけて確保するシーンが、攻守ともに目立った。それはフィジカル面の差だけでなく、スキルの差という面もある。今後、清水が磨いていくべき課題のひとつと言えるだろう。
 
 その分、前半の中頃から鹿島が盛り返していったが、流れが変わりかけた41分に金子翔太が大きな一仕事を見せる。GKからのロングボールを鄭大世が頭で後方にフリックし、そのボールを植田直通がクリアしようとしたが、そこに素早く詰めた金子がキックを身体でブロック。こぼれ球を自ら豪快に蹴りこんで、自身のJ1初ゴール。チームに自信を与える貴重な先制点をもたらした。
 
 たとえ無駄足に終わっても、休むことなく前線からのチェイシングをひたすら繰り返してきた金子。そのご褒美として与えられた1点と言えるかもしれない。
 
 後半は、鹿島が左SBを山本脩斗から西大伍に代えて反撃に出たが、逆に速い攻撃でチャンスを多く作ったのは清水。62分に鄭のヘッド、68分に金子のシュートで決定機を迎えた後の71分、カウンターから鄭がゴール前にボールを入れ、こぼれ球をキープした金子が裏にパス。2列目から飛び込んだ白崎凌兵が左足で流し込んで、王者から2点のリードを奪った。

 CBがふたりとも日本代表で、GKは韓国代表という堅守の鹿島から続けざまに決定機を作り、流れの中から2得点。21歳の金子と23歳の白崎が今季初ゴールを決め、「あのふたりが点を取ってくれたのはありがたい。チームにとって大事なゴール」と鄭も振り返る。これまで鄭以外に点を取る選手がいないという懸念があった中で、非常に大きな収穫だった。

次ページ客観的に試合内容を振り返れば、清水も自信を失う必要はない。

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