【FC東京】“サッカー小僧”の奥底にある信念。中島翔哉はなぜ終了間際まで仕掛け続けるのか

2017年03月05日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「時間稼ぎという考えは一切浮かばなかった」

54分からピッチに入った中島。果敢な仕掛けで幾度も守備網を切り裂き、最終盤に得点もマーク。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ2節]FC東京2-0大宮/3月4日(土)/味スタ
 
 90+1分だった。大宮のゴールマウスを守る塩田仁史によって、大久保嘉人の放ったループシュートは阻まれた。そのこぼれ球に詰めていたのが中島翔哉だった。
 
 スコアは2-0となり、残り時間はわずか。54分に河野広貴に代わってピッチに立った男が、試合を決定付けるゴールを決めたのだ。
 
「あそこに詰めているのは、非常に素晴らしい。あれで勝ちを確信できた」とは、惜しくも移籍後初得点を逃した大久保の弁。確かに、ポジショニングの妙ではあった。
 
「足を運んでくれたサポーターに勝利を届けられるように」。結実した想いとは別に、中島はある信念を持って試合に臨んでいる。
 
 スコアボードの数字が動いた場面に話を戻す。始まりは、高い位置での守備だった。ボールホルダーを挟み込んでマイボールにすると、室屋成から中島、ワンタッチで再び室屋へ。
 
 瞬間、中島はスピードを上げてボールを呼び込んだ。対峙するは大宮のCB河本裕之。後半アディショナルタイムという状況、スペースの空き具合、1-0という得点差を考えればコーナーフラッグ付近へ運んで時間稼ぎという手もあったはず。
 
 だが、仕掛けた。一旦左へ持ち出すような動きを見せて、切り返し、大きく右へ。DFを完璧に手玉に取った。そして、クロス。これがチーム2点目のシーンにつながった。躍動した青赤の背番号23は回想する。
 
「サッカーは何点取れるかというスポーツだと思っている。時間稼ぎという考えは頭の中にまったくないし、見ている人たちもつまらないはず。そんなのは一切浮かばなかった。1-0より2-0、2-0よりは3-0のほうが良い。欲を言えば、いくらでもゴールを取りたい」
 
 これが、"サッカー小僧"たる所以なのだろう。サッカーを楽しみたい、サッカーを楽しんでもらいたい。若武者を突き動かす気持ちは純粋で、貪欲だ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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