【札幌】「イメージできていた」逆転弾。内村圭宏の芸術的シュートはこうして生まれた

2016年11月13日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「ああいう展開でゴールしたら『美味しいな』と」

劇的逆転弾を沈めた内村。このゴールで勝点3を手にした札幌はJ1昇格とJ2優勝に王手をかけた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J2・41節]千葉 1-2 札幌/11月12日/フクアリ
 
 内村圭宏が決勝点を決めてゴール裏へ走り寄ると、四方田修平監督をして「ホームのような雰囲気を作ってくれた」と言わしめた札幌サポーターのひとりが、スタンドから落ちた。
 
 ピッチで戦う選手たちの、戦況を見守るベンチの、一体感を演出したサポーターの、札幌関係者の興奮を表わす出来事。誰もがJ1昇格を決めたかのように、喜びを爆発させた。
 
 もはや引き分けか……。そう考えても仕方のない、まさに試合終了間際の大逆転劇。"筋書きのないドラマ"という言葉がピタリと当てはまるゲームだった。
 
 90+5分、ク・ソンユンのゴールキックを受け取った河合竜二から前線へとロングボールが蹴られた。数秒後にヒーローとなる内村圭宏は、そのボールを冷静な目で眺めていた。

「時間もないし、(河合)竜二さんが縦に大きく蹴ってくると思っていた。それをヘイスが競り勝つか、そのまま流れてくるか。どちらにしろ先に触って、絶対にシュートまでいこうと考えていた」
 
 ボールに働きかけようとしたヘイスと千葉DFの頭上をボールが通過。内村は予見したかのような反応を見せる。「相手DFの背後から抜け出す、好きな、得意な形」だった。
 
 浮き球を右足で捉える。出し抜かれたような千葉DFが必死に伸ばした足も、GKが必死に伸ばした右腕もボールに届かない。そして、ゴールネットが揺れた。サポーターの元へと駆け出していた。
 
「打つ瞬間はゴールもGKの位置も見ていなかった。でも、イメージはできていたし、ファーサイドを狙うのも決めていた。角度はなくて、ボールは浮いていて、苦しかったですけどね。
 
 でも、なんか予感はしていたんで。ああいう展開でゴールしたら『美味しいな』と思っていた。(逆転弾は)興奮したし、みんなで喜べたのはやっぱり気持ちいい」
 
 まるで、すべてが内村の掌の上だったかのよう。決して諦めない気持ち、熱くなり過ぎない思考、いち早くボールに反応してイメージを具現化できる身体のキレ。すべてが上手くハマったのだ。
 
 千葉に主導権を握られる苦しい展開を打破するために、後半頭から投入された背番号13。彼が芸術的とも言えるシュートでもたらした勝点3の意味は、とてつもなく大きい。
 
 残り1試合。2位の清水、3位の松本とは勝点3差。きっとこのまま突っ走ってくれるだろう。そして今オフ、札幌サポーターは様々なところで口にするに違いない。「41節・千葉戦の内村のゴールがJ1昇格を大きく引き寄せた」、と。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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