【湘南】J2降格という現実――大怪我から復帰した菊地俊介がサポーターに立てた誓い

2016年10月23日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「最終戦にも間に合わないかもと言われていた」

第1ステージ3節・浦和戦以来のピッチに立った菊地。大宮育ちで、大宮Jrユースにいたこともあり、NACK5スタジアム大宮での復帰には感慨深いものも。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第2ステージ15節]大宮 3-2 湘南/10月22日/NACK
 
 菊地俊介にとっては、ピッチに戻ってきた喜びとJ2降格となった悲しみが交差する日となった。ミックスゾーンで話しながら、背番号2は感情を抑えられず、涙は頬を伝った。
 
 勝利だけが求められる一戦で、前半に2失点。大宮のパスワークに翻弄され、押し込まれる展開で後半にも追加点を許し、まるでサンドバックのまま試合を終えるのかもしれないと、諦めの気持ちが芽生えていてもおかしくなかった。
 
 そんななか、菊地が曺貴裁監督のもとに呼ばれた。「リハビリ期間の悔しい気持ちをぶつけてこい」(曺監督)――。3月24日の練習中に前十字靭帯損傷という大怪我を負ってから、約7か月。ついに頼れる男が戻ってきた。
 
「最終戦にも、もしかしたら間に合わないかもと言われていた。予定よりかなり早く復帰できて、病院の先生やトレーナーに感謝したい。
 
 僕は大宮で育って、このスタジアムにもよく来ていた。前座には所属していた少年団が出ていましたし、多くの友人が観戦に来てくれて、ここで復帰できたのは思い出になる」
 
 コンディションが整っているとは言い難いパフォーマンスだった。だが、躍動しているように見えた。「いつも以上に聞こえていた」という湘南サポーターの声が、背中を後押ししたのかもしれない。
 
「俊介は驚異的な回復力を見せてくれた。大怪我を経て、精神的にも強くなった。彼が入ってから2得点しましたが、それは神様からの彼の頑張りに対するご褒美だと思う」(曺監督)
 
 だが、反撃はジネイの2ゴールまでだった。山田直輝のヘディングシュートが枠を捉えられず、主審の笛がスタジアムに響き渡ると、湘南の選手たちはしばらく動けなかった。菊地もピッチにへたり込んだ。
 
「サポーターの人たちは試合前に拍手をくれて、『待っていた』という声も聞こえた。感謝の気持ちでいっぱい。勝つしかなかったので、自分が入って逆転できれば良かったが……。結果が出なくて本当に申し訳なく思う」
 
 J1残留を懸けた戦いは、ついに終わってしまった。だが、すべてが終わったわけではない。次節のホーム最終戦を含めてリーグ戦は2試合を残しており、天皇杯も勝ち進んでいる。
 
「試合終了後に拍手で迎えてくれたサポーターに必ず恩返しをしたい」。そんな誓いとともに、残り試合で今季への悔いを少しでも晴らすために、菊地とチームは進んで行く。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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