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祝宴は、ない。どこか静かだったFA杯優勝。退屈な決勝でセメニョの美しい一撃。そして退任噂のペップはまたひとつトロフィーを積み上げた【現地発】

カテゴリ:メガクラブ

田嶋コウスケ

2026年05月18日

閉塞感の漂う90分だった

シティで20個目のタイトルを手にしたペップ。退任の噂に「人々は存在しないものを見ている」と語る。(C)Getty Images

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 試合後のウェンブリー・スタジアムで、ジョゼップ・グアルディオラ監督はしばらく周囲を見渡していた。

 歓喜する選手たち。少しずつ空席が増えていくスタンド。FAカップを手にしたばかりの監督に向けられるカメラ。そこには、いつものように大げさな感情を見せないペップがいた。

 だが、その表情を人々は見逃そうとしなかった。これが、マンチェスター・シティの監督として最後のウェンブリーになるのではないか。そんな視線が、スペイン人指揮官に向けられていた。

 本人は否定する。契約は2026-27シーズン終了まで残っており、最後まで全うするつもりだと繰り返している。自分の言葉が疑われることに、むしろ不満すら示した。

 それでも、今夏にはベルナルド・シウバとジョン・ストーンズがクラブを去る。10年近く続いた王朝が、少しずつ形を変えようとしているのは確かだ。

 節目のような日に、ペップはシティで20個目のタイトルを手にした。主要タイトルとしては16個目。3月のリーグカップに続き、今季2つ目の国内カップである。

 ただし、その勝ち方は華麗ではなかった。

 5月16日のFA杯決勝、チェルシー対シティは、なかなか試合が動かない、閉塞感の漂う90分だった。チェルシーは5バック気味に構え、中央を固める。シティはボールを握りながらも、いつものようなリズムで相手を崩せない。前半は決定機が少なく、試合は慎重さと停滞感に包まれた。
 
 ペップの選択にも違和感はあった。ラヤン・シェルキではなく、オマル・マルムシュを先発で起用。さらにロドリも万全とは言い切れず、シティは中盤で滑らかさを欠いた。だが、ペップはハーフタイムに修正する。シェルキを投入し、後半途中にはマテオ・コバチッチも加えた。

 均衡が破れたのは72分。右サイドへ流れたアーリング・ハーランドが低いクロスを入れる。ニアへ走り込んだアントワーヌ・セメニョは、右足の内側でわずかに角度を変えた。ボールはチェルシーのGKロベルト・サンチェスの脇を抜け、ファーサイドへ吸い込まれる。

 退屈な決勝に突然、美しい瞬間が落ちてきた。

 この一撃でシティは1-0で勝利した。内容で圧倒したわけではない。だが、試合を決めるべき場面で、決めるべき選手が現われた。

 そのセメニョの歩みを思えば、FA杯決勝のゴールにはより深い意味がある。

 26歳のアタッカーは、エリート街道を一直線に進んできたわけではない。ブリストル・シティ時代にはレンタルを重ね、2018年にはノンリーグ(5部以下)のバース・シティでもプレーした。

 そこから少しずつ階段を上がり、ボーンマスでプレミアリーグ屈指の推進力を持つ選手へと成長。昨季はプレミアリーグで11ゴールをマーク、今季も20試合で10ゴールを挙げた。そして今年1月、シティが獲得に踏み切った。

 移籍金は6250万ポンド。日本円で約120億円強の大型補強である。冬の移籍市場でこの額を投じることにはリスクもあるが、セメニョは加入直後からその疑問を消していった。
 
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