【仙台】惨敗のち敗戦――前を向いて這い上がることだけが“想い”に報いる手段となる

2016年09月11日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「『もう応援したくない』と言われても仕方ないと思っていた」(渡邉監督)

天皇杯の惨敗を受け、必勝で臨んだ横浜戦。渡邉監督を筆頭に気持ちを見せたが……。今後、どうやって這い上がるかが鍵となる。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第2ステージ11節]仙台 0-1 横浜 9月10日 ユアスタ
 
 会見場に現われた渡邉晋監督の表情は沈痛だった。リーグ戦では、大宮戦(1-2)と広島戦(0-2)に続いて3連敗。なによりも、ホームで2-5とジャイアントキリングを食らった天皇杯2回戦の盛岡戦から反発力を見せられなかったのが効いているのだろう。
 
「ちょうど1週間前、悔しい惨敗からどのような挽回力を見せられるのか。非常に重要な1戦だったとの認識はありました。試合開始前にはサポーターから素晴らしい声援を送ってもらって、あんなことがあっても、一緒に戦ってくれるんだと……。
 
 たくさんのエネルギーをもらったのに、その想いに報いることができなかったのは非常に残念ですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
 
 相手がルヴァンカップと天皇杯からの連戦の最終戦だということを差し引いても、決して悲観するような内容ではなかったように思う。想定していなかった4-1-4-1に対しても、「そんなに不利益なことはなかった」というのも強がりではないはず。
 
 実際に前半は横浜のアンカーの脇を上手く使いながら攻撃を組み立て、中央だけでなくサイドにも散らして押し込んだ。それだけに、「少しオープンになったところでうちよりも相手の良さが発揮されてしまった」のは痛恨だったに違いない。
 
「あれだけの惨敗の後ですから。サポーターに『もう応援したくない』と言われても仕方ないと自分では思っていた。実際に、そう考えていた人たちも多かったかもしれない。
 
だから、『横断幕はないかもしれない』『声を張り上げてくれないかもしれない』と、『そういう可能性はゼロではない』と選手たちに試合前のミーティングで伝えていました。
 
 ウォーミングアップは、いつもと少し違うような空気だったと思います。ただそれでも、ロッカーに戻ってからは『キックオフすれば必ず声援をくれる。それを信じて戦ってくれ』と送り出しました。
 
 そうして選手が入場したら、『ベガルタ仙台!』とコールが響いた。その行為に対して、絶対に応えなければならなかった……。それができなかったのは本当に悔しい」
 
 渡邉監督、選手たちにとって、今節はある意味でいつも以上に勝利を求めなければならない、特別な意味を持つゲームだった。だからこそ、指揮官は言葉を紡いでいる最中に、表情を崩すことは一度もなかったのだ。
 
 結果だけを鑑みれば、再びサポーターの後押しに背いてしまったことになる。だが、俯いてはいられない。ルヴァンカップも天皇杯も敗退した仙台にとって、残るはリーグ戦しかない。そこで、観戦している人々の心をどれだけ揺さぶれるのか。
 
「残り6試合。我々の今季は、もうそれしか戦いの場はない。もう一度前を向いて、這い上がって行く。サポーターの皆さんもぜひもう一度踏ん張っていただいて、一緒に戦い抜いてほしい」
 
 歯痒さを噛み締めながら、不甲斐なさを心に秘めながら、渡邉ベガルタは進んで行く。しかし、自分たちだけで歩もうなどと考えてはいない。すべてはサポーターとともに。年間勝点1位も、第2ステージ優勝も、カップ戦も手からすり抜けた今こそ――。
 
 仙台の一体感とチーム力が試されている気がしてならない。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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