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“イージー”論こそ最大の落とし穴。日本初戦の相手、オランダは優勝候補の一角だ【WSD編集長コラム】

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2026年03月04日

スペインやドイツといったW杯優勝国と比べれば“イージー”と見る声も国内にはある

北中米W杯で日本と対戦するオランダ。(C)Getty Images

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 オランダを“イージー”と見る声があるという。それこそが、もっとも危うい。

 6月に開幕する北中米ワールドカップで、日本が初戦に迎えるのはそのオランダだ。主要国際タイトルは88年のEUROのみ。スペインやドイツのようなW杯優勝経験国と比べれば、実績面では見劣りするのは事実だ。しかし、現在のチームを精査すれば、その評価がいかに表層的かが見えてくる。

 前回カタール大会では堅守速攻の色が濃かった。だが今は違う。個々の能力は明らかに底上げされ、攻撃のバリエーションも増えた。守備の強度を保ちながらボール保持の質も高い。総合力で見れば、オランダは今大会の優勝候補の一角と見るべきだ。

 最終ラインの陣容は世界屈指である。フィルジル・ファン・ダイク、ユリエン・ティンベル、デンゼル・ドゥムフリース、ミッキー・ファン・デ・フェン。高さ、強さ、スピードに加え、後方からゲームを組み立てられる配球力も備える。守るだけの守備陣ではない。試合を設計できるディフェンスだ。

 だが、現地で最も注目を集めているのは中盤の“ドリームトリオ”である。88年のEURO制覇の原動力となったマルコ・ファン・バステン、ルート・フリット、フランク・ライカールトになぞらえ、フレンキー・デ・ヨング、ライアン・フラーフェンベルフ、ティジャニ・ラインデルスがそう呼ばれている。

 この3人が厄介なのは、表記上は4-3-3でも、中盤の役割が局面ごとに入れ替わる点だ。ビルドアップではデ・ヨングが最終ラインに落ちて組み立ての起点となり、周囲の配置を動かす。すると、前線の3枚に加えてインサイドハーフの一枚――たとえばラインデルス――が高い位置に出入りし、攻撃は「3人+1人」ではなく「3人+もう1人が顔を出す」形で厚みを増す。そこでバランスを取るのがフラーフェンベルフだ。前に出た味方の背後を消し、中央のカウンターコースを塞ぎ、奪われた瞬間には即時奪回の圧力も担う。固定された役割で押し切るのではなく、可変と連動で相手の基準点をずらしてくる中盤である。
 
 日本が真正面からぶつかれば、力関係では分が悪い。では、勝機はどこにあるのか。

 日本が勝つとすれば、フィジカルではなくテンポで上回るしかない。試合を速くするのではない。速さと“間”を使い分け、その振れ幅で相手の判断を揺さぶることだ。

 守備では、むやみに追い回さないことが前提になる。相手がデ・ヨングである以上、奪い切れなければ一気に背後を突かれる。奪いどころを見極め、ラインを保ち、局面を限定する統制が求められる。

 攻撃では、ボールを握った局面で主導権を取れるかどうかだ。左右に動かし、あえてテンポを落とし、再び加速させる。その緩急で守備ブロックを揺さぶり、相手の強度を下げられるか。

 もっとも、オランダの強みは中盤だけではない。ストライカー不在が弱点と見られがちだが、それは単純化しすぎだ。左サイドから内に絞るコディ・ガクポ、二列目からタイミングよく飛び出すラインデルス。前線は固定的な9番に依存せず、複数の選手がゴール前に現われる。攻撃は一度で終わらない。跳ね返しても、第二波、第三波が押し寄せる。重層的で、したたかだ。

 オランダは強い。それは事実である。しかし、日本が世界の上位を本気で目指すなら、こうした相手を難敵と評している段階にとどまってはいられない。

 この一戦は、日本が“挑戦者”を卒業できるかどうかを測る試金石になる。初戦は、その覚悟を問う90分だ。

構成●加藤紀幸(ワールドサッカーダイジェスト編集長)

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