視覚ではなく、聴覚で捉えていた
ラ・リーガ第24節、レアル・マドリー対レアル・ソシエダ(4-0)。開始わずか4分に届けられたトレント・アレクサンダー=アーノルドのアシストを振り返り、ゴンサロ・ガルシアは思わず笑みをこぼした。
「あんな『極上のキャンディ(お膳立て)』をもらったら、外す方が難しいよ」
イングランドからやってきた右サイドバックは、何の変哲もない場面を一瞬で決定機へと変えてみせた。右のタッチライン際、バルベルデと談笑するかのようにパスを交換したその刹那、隙を見せた相手の背後へ吸い込まれるようなクロスを供給したのだ。トレントのパスは唯一無二である。それは最後尾からの脱出を助け、最短距離でゴールへと直結させる。
マドリーの監督、アルバロ・アルベロアは目を細める。「彼の特別さは一目瞭然だ。精度の高さはもちろん、パスに込められた『強度』のつけ方が群を抜いている」
その「強度の調整力」の正体を解き明かすのが、マドリード工科大学でサッカーのバイオメカニクスを専門とするアルチット・ナバンダール教授の分析だ。
「彼の股関節の可動域は驚異的です。振り抜いた足が、極めて高い位置で動作を終える。我々の研究では、この可動域の広さがボールスピードの最大化に直結することが証明されています。いわば、ゴルフのスイングと同じ原理です。最後まで完全に振り抜き、いわゆる『フォロースルー』を完結させることで、ボールに爆発的なエネルギーを伝えているのです」
「あんな『極上のキャンディ(お膳立て)』をもらったら、外す方が難しいよ」
イングランドからやってきた右サイドバックは、何の変哲もない場面を一瞬で決定機へと変えてみせた。右のタッチライン際、バルベルデと談笑するかのようにパスを交換したその刹那、隙を見せた相手の背後へ吸い込まれるようなクロスを供給したのだ。トレントのパスは唯一無二である。それは最後尾からの脱出を助け、最短距離でゴールへと直結させる。
マドリーの監督、アルバロ・アルベロアは目を細める。「彼の特別さは一目瞭然だ。精度の高さはもちろん、パスに込められた『強度』のつけ方が群を抜いている」
その「強度の調整力」の正体を解き明かすのが、マドリード工科大学でサッカーのバイオメカニクスを専門とするアルチット・ナバンダール教授の分析だ。
「彼の股関節の可動域は驚異的です。振り抜いた足が、極めて高い位置で動作を終える。我々の研究では、この可動域の広さがボールスピードの最大化に直結することが証明されています。いわば、ゴルフのスイングと同じ原理です。最後まで完全に振り抜き、いわゆる『フォロースルー』を完結させることで、ボールに爆発的なエネルギーを伝えているのです」
ナバンダール教授は、マドリーのOBであり、キックの名手だったデビッド・ベッカムとの比較も交える。
「ベッカムも同様に広大な股関節の可動域を持っていましたが、トレントは左腕を彼ほど高く上げません。また、軸足をボールの回転軸より少し前に置くことで、スイングの開始から終わりまでの可動域をさらに広げているのです。脚の長さもそれに一役買っており、何もないところから『鞭のようなしなり』を生み出すことを可能にしています。そして何より重要なのは、インパクトの質そのものの高さなのです」
この卓越した技術は、幼少期からの鋭い観察眼によって養われたものだ。2004年、彼が6歳でリバプールのアカデミーに足を踏み入れたその夏、レアル・ソシエダからシャビ・アロンソがやってきた。トレント少年は、それから5シーズンにわたり、稀代の司令塔が放つ放物線を間近で見守る特等席を得たのである。そして20余年の時を経て、二人はマドリードの地で、監督と選手として再会を果たした。
「初めて言葉を交わしたとき、彼に伝えたんだ。子供の頃、あなたや(スティーブン・)ジェラードを見ていて、パスとは芸術なのだと気づいたんだ、と」
トレントは『Amazon Prime』のインタビューで、自身の原点とも言える前指揮官とのエピソードをそう回想している。
その「芸術」の真髄を、彼は視覚ではなく、聴覚で捉えていた。
「彼らがボールを蹴る時、そこからは他とは違う『音』が響いていた。良いパスかどうかは、耳で分かるんだ。目で見ること以上に、インパクトの音が重要なんだよ。クリーンに、そして純粋にボールを捉えた時の音は、他のそれとは全く別物なのだから」
「ベッカムも同様に広大な股関節の可動域を持っていましたが、トレントは左腕を彼ほど高く上げません。また、軸足をボールの回転軸より少し前に置くことで、スイングの開始から終わりまでの可動域をさらに広げているのです。脚の長さもそれに一役買っており、何もないところから『鞭のようなしなり』を生み出すことを可能にしています。そして何より重要なのは、インパクトの質そのものの高さなのです」
この卓越した技術は、幼少期からの鋭い観察眼によって養われたものだ。2004年、彼が6歳でリバプールのアカデミーに足を踏み入れたその夏、レアル・ソシエダからシャビ・アロンソがやってきた。トレント少年は、それから5シーズンにわたり、稀代の司令塔が放つ放物線を間近で見守る特等席を得たのである。そして20余年の時を経て、二人はマドリードの地で、監督と選手として再会を果たした。
「初めて言葉を交わしたとき、彼に伝えたんだ。子供の頃、あなたや(スティーブン・)ジェラードを見ていて、パスとは芸術なのだと気づいたんだ、と」
トレントは『Amazon Prime』のインタビューで、自身の原点とも言える前指揮官とのエピソードをそう回想している。
その「芸術」の真髄を、彼は視覚ではなく、聴覚で捉えていた。
「彼らがボールを蹴る時、そこからは他とは違う『音』が響いていた。良いパスかどうかは、耳で分かるんだ。目で見ること以上に、インパクトの音が重要なんだよ。クリーンに、そして純粋にボールを捉えた時の音は、他のそれとは全く別物なのだから」





















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