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鹿島にタイトルを――植田直通、鈴木優磨、三竿健斗の使命感。そして新たな決意「『これからがスタートだ』と確認しました」

カテゴリ:Jリーグ

元川悦子

2025年12月07日

「ここまで時間が経ってしまって申し訳なかった」

タイトル奪還に尽力した(左から)三竿、鈴木、植田。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 12月6日のJ1最終節、鹿島アントラーズはホームで横浜F・マリノスに勝てば、文句なしに2016年以来のJ1タイトル獲得が決まる状況だった。

 11月30日の前節・東京ヴェルディ戦(1-0)は重圧が感じられたが、横浜FM戦はメルカリスタジアムに集結した3万7000人を超える大観衆に背中を押されたこともあり、スタートから敵を凌駕。一方的にゲームを支配した。

「全員が入りから相手を圧倒しようという姿勢を見せていましたし、僕たちの武器である切り替え、強度、球際のところを90分間出したと思う」と中盤を統率した三竿健斗も語気を強めた。鬼木達監督が就任当初から求めていたポゼッションとトランジションの両方を柔軟に使い分ける見事なゲーム運びを披露。鈴木優磨も「集大成という形で、最後の最後にこういう戦いができたのは非常に大きい」と自信をのぞかせた。

 こうした流れのなか、20分と57分にレオ・セアラが得点。それもこの日、先発に抜擢された荒木遼太郎、松村優太が良い仕事をしたうえで奪ったゴール。指揮官の采配もズバリ的中した格好だ。最後の1失点は余計だったが、最終的に鹿島は2-1で勝利。9年ぶりのタイトル獲得がついに現実になったのである。

 そこで人目をはばからず号泣したのが、長くキャプテンマークを巻いた植田直通と攻撃の主軸である鈴木だ。鈴木と同じ29歳の三竿も目を真っ赤にしながら天を仰いだ。
 
 ご存じの通り、この3人は2016年のリーグ優勝を知る生き証人。当時はベンチに入るか入らないかという若手で、今のチームで言えば津久井佳祐や徳田誉のような位置づけだったかもしれない。それでも常勝軍団の空気感を確実に感じ取り、大事に持ち続けてきたのは間違いない。ゆえに「今のチームを自分たちが引っ張らなければいけない」と強い使命感を持って戦い続けていたのだ。

 今のチームには9年前の主力・柴崎岳もいるが、今季の10番は出番が限定的。この日もベンチ外で、やはり植田・鈴木・三竿の3人に託される部分が大きかった。植田自身も凄まじい責任感を抱いていたことを明かした。

「僕だけじゃなく優磨や健斗、海外から帰ってきた選手たちは、タイトルを知らない選手にこの味を知ってもらう必要があった。自分も(2023年1月に)帰ってきてからは『(鹿島に)タイトルを取らせなきゃいけない』と毎年思っていた。ここまで時間が経ってしまって申し訳なかった」と背番号55を付ける男は男泣きの意味をしみじみと語った。

「この4年間で言えば、正直、一番僕が負けた時の責任を負っていたと思います」と鈴木も静かに話した。

 植田が2023年1月、柴崎が23年夏、三竿が24年夏に戻ってくる前に、鈴木はシント=トロイデンから復帰。小笠原満男が背負った40番を継承し、頂点に挑み続けてきた。が、チームは毎年のように大一番を落とし、勝負弱さを露呈。タイトルを掴み損ねてきた。その悔しさと失望感を乗り越えた価値は本当に大きいものがあったのだ。

「チームとしても個人としても難しい時期が続いたので、本当に報われたなという感覚に今はなってます」と彼は安堵感を口にした。それは植田、三竿にも共通する思いだろう。
 
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