Jリーグの欧州拠点「J.LEAGUE Europe」の全貌! 具体的な活動内容や成果と課題、見据える展望などを徹底深堀り【インタビュー】

2025年12月02日 中川翼(サッカーダイジェストWeb編集部)

“敏腕代理人”を責任者に抜擢

「株式会社Jリーグインターナショナル」の代表取締役である山崎社長(右)と「J.LEAGUE Europe」の責任者を務める秋山氏(左)。写真:永島裕基

 Jリーグはグローバル展開を加速させるため、グループ企業である「株式会社Jリーグインターナショナル」の欧州拠点としてロンドンに「J.LEAGUE Europe」を設立。今年1月から本格的に始動した。

 ミッションとして「日本サッカーの更なる発展・水準向上のために、欧州サッカー界とJリーグ・Jクラブの接点を様々な領域で増やしていくこと」を掲げるなか、実際にはどのような活動や取り組みを行なっているのだろうか。

「株式会社Jリーグインターナショナル」の代表取締役である山崎和雄社長、かつては代理人として多くの日本人選手たちの欧州移籍を手掛け、現在は「J.LEAGUE Europe」の責任者を務める秋山祐輔氏に話を訊いた。

――◆――◆――

――あらためて、「J.LEAGUE Europe」設立の具体的な目的を教えてください。

「(山崎社長):これまでJリーグ全体の課題として、内に閉じこもってしまう傾向がありました。しかし、サッカーは世界に繋がっているスポーツです。日本人選手たちはどんどん海外に出て活躍しています。一方でクラブの経営者や強化部門の方々も含めて、世界と同じレベル感で強化していかないと、日本サッカー界全体が進化できないと考えています。

 日本からヨーロッパへ出張で行くことはできますが、日常的に現地の方々とコミュニケーションを取るのは難しい。そこで、我々がロンドンに拠点を置き、得たものをJクラブに還元して繋いでいく。これがきっかけです。本来は各Jクラブが個別に海外でネットワークを築いて活動していくのが理想ですが、なかなか難しい現状があるため、まずはJリーグとして『J.LEAGUE Europe』を設立しました。やはり1番の目的は、ミッションにも掲げている欧州とのタッチポイントを増やすこと。Jクラブ関係者の方々の意識を変えてもらい、世界で戦えるクラブを作るにはどうすればいいかを日常的に考えていただきたい。それが日本サッカーを強くすることに繋がると思っています」
 
――「J.LEAGUE Europe」の設立にあたり、当時、"敏腕代理人"として活躍されていた秋山さんを責任者に抜擢した理由は何ですか?

「(山崎社長):理由はいくつかあります。まず、このミッションを遂行するには、単に英語が話せてサッカーを知っている人というだけでは、現地の方々との関係を構築するのに時間がかかりすぎてしまいます。すでにヨーロッパのクラブ関係者たちとのネットワークを持っている人でなければ、大幅な遅れをとってしまうと考えていました。また、Jリーグ全体の課題や野々村(芳和)チェアマン体制のカルチャーを理解していることも重要です。そう考えた時に、これらの条件を満たし、始動初日から活動できる人物は、彼の他にいませんでした」

――秋山さんは「J.LEAGUE Europe」の責任者に抜擢された時、どんな心境でしたか?また現地ではどんな活動を行なっているのでしょうか?

「(秋山氏): Jリーグがグローバルな環境でどう位置付けられるか、ヨーロッパを中心とする世界とどう繋がっていくか、という新しいチャレンジをする段階で、そのプロジェクトに最初から関われることは、非常に光栄なことだと感じたのが素直な気持ちです。

 私は、日本とヨーロッパの人や情報、ノウハウ、ネットワークといったあらゆるタッチポイントを増やすことを目ざしています。具体的にお話すると、良い監督を日本に招聘することや質の高いクラブ提携を増やすこと、レッドブルが大宮アルディージャ(現在はRB大宮アルディージャ)に出資したような取り組みも、もっとあっていいと思っています。これらすべては、Jリーグが大きくなり、価値を上げるために行なっており、日本サッカーのエネルギーをヨーロッパだけでなくアジアやアメリカなど、世界に向けて放出していく循環を作れればと考えています。

 また、ヨーロッパでJリーグをもっと知ってもらうための情報発信も行なっています。現在、欧州の約100クラブにニュースレターを送っていますし、イギリスのメディア『FourFourTwo』とタイアップ記事も制作しました。他には選手情報サイト『Transfermarkt』とも連携しています」
 

次ページ拠点にロンドンを選んだ理由は?

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事