【仙台】昨晩に眺めた星空と復興祈念ユニホーム。渡邉晋監督は勝ち試合になにを見たか

2016年08月14日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「“復興のシンボル”として輝こうと話してピッチに送り出した」

復興祈念ユニホームを纏っての勝利。負傷者が続出するなかで、ピッチに立った全員が魂のこもったプレーを披露した。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1・第2ステージ8節]仙台 4-2 柏 8月13日/ユアスタ
 
 大きな意味のある試合だった。それは前節・鹿島戦の勝利に続く今季3度目の連勝(その他のふたつは第1ステージ13節・湘南戦から16節・甲府戦と第2ステージ4節・新潟戦から5節・湘南戦)であり、ふた桁もの故障者を抱えての勝点3獲得であったからだ。
 
 だが、なによりも重要だったのは、「復興祈念ユニホームを着用して勝った」事実ではないだろうか。会見場に入ってきた渡邉晋監督は、昨晩のちょっとした事柄について言葉を紡いでから、勝ち試合の内容を振り返った。
 
「昨日、帰りながら夜の星空を見上げると、澄み切った空に素晴らしい星が立ち並んでいた。そんな星のように、我々が"復興のシンボルとして輝こうと選手たちに話をして、ピッチに送り出した。難しい、厳しいゲームだったけれど、今日ばかりは光り輝くことができたんじゃないでしょうか」
 
 怪我人が多く、満身創痍のチーム状態だが、出場した選手たちは誰もが魂を込めて戦っていた。もちろん、すべてが上手くいったわけではない。「戦前の予想で、柏は4-4-2で挑んでくると思っていたのが、蓋を開けると(4-1-4-1と)違った」ため、マッチアップ上のズレができて、マークを外されるシーンも目立った。
 
 それでも、すぐに修正を施せる強さが今の仙台にはある。「前からプレスを掛けられないのであれば、自陣でコンパクトさを保って守備をする」という共通理解をベースに、アンカーに入った大谷秀和を消す作業を行ない、外へと追いやって、狙いどころを定めて狩る。
 
 チャレンジ&カバーを徹底させる。11人が決してサボらない。そういった原則原理を全員が全うしたことによって、「出場する選手が変わっても、それができたのはチームとしての総合力を示せた」という指揮官の言葉にも素直に頷ける。
 
 2失点を喫したこと、それによって一時は2-0から同点に追いつかれてしまったことは今後の反省材料だ。「(R・ロペスが倒れて)中断したことで全員の気持ちが少し緩んで、その後のプレーがPKにつながってしまった。勝点を取れてはいるけど、後半の入りも修正しないと今後は厳しくなる」とは、主将の富田晋伍の弁。
 
 渡邉監督は「決して勝ちに満足することなく、この先も上を目指して戦い続けることが大事」と試合後のロッカールームで話したという。それでも、次節・大宮戦に向けた練習を開始するまでは、この試合結果に酔いしれてもいい気がしている。"復興のシンボル"として、人々の心を照らしたであろう勝利なのだから。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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