【セルジオ越後】「引き分けで満足」なんてとんでもない。メキシコ戦では“選手層の薄さ”が露呈した。前半の優勢を得点に繋げないと…

2025年09月07日 サッカーダイジェストWeb編集部

良い試合だった。でも内容を楽観視はできない

日本代表はメキシコ相手に攻勢も、勝ち切れなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 日本代表は9月7日、国際親善試合でメキシコ代表と対戦した。0-0のドローに終わったけど、良い試合だったと思う。

 ただ、内容を楽観視はできない。むしろ「勝てる試合を落とした」という厳しい見方で総括すべきだ。

 前半のハイプレスは確かに機能して、相手に自由を与えず、試合の主導権を握ることができていた。でも重要なのは、その優勢な時間帯に得点を奪えなかったという事実だよ。

 決定的なチャンスを逸した場面は、単なる不運ではなく、アジアレベルとは異なるプレッシャー下での判断力や技術の差の表れと言える。前半こそが、この試合の勝負を決めるべき時間帯だったんじゃないかな。

 後半に入り、運動量が落ちてプレスの強度が下がると、メキシコにペースを握られる時間が増えた。個々の技術が高い相手にボールを保持され、何度か危険な場面を作られたのは必然の結果だ。

 問題は、前半の戦い方が通用しなくなった後の「プランB」が存在しなかったこと。選手交代も、流れを変えるジョーカーとしての機能は果たせず、チーム全体のクオリティが低下してしまった感は否めない。

 相手のメキシコは前半に主力の選手1人を怪我で欠き、ワールドカップ予選も戦っていないので、チームとしての完成度が高い状態ではなかった。日本がここまで4連敗していた相手とはいえ、今回は勝利が求められる状況だった。

 ワールドカップでベスト16の壁を突破するためには、こうした同等レベルの相手に確実に勝ち切る力が必要不可欠。その意味で、この引き分けは大きな課題を残したとも言えるね。
 
 個々の選手に目を向けても、課題は多い。三笘は、所属クラブで見せるような圧倒的な突破力を代表では発揮しきれていない。彼を活かすための組織的なサポートや、より彼のスピードが活きる戦術的工夫が求められる。

 また、南野や上田に関しても、所属リーグでの得点数がそのまま国際舞台での活躍に直結するわけではない。重要なのは「誰から点を取ったか」という得点の質。ワールドカップで対戦するDFは、彼らが普段対峙している相手よりも数段レベルが高い。そのレベルの相手からゴールを奪うための、もう一段階上のクオリティが今の日本代表には不足していると思うよ。

 この試合で露呈したのは、選手層の薄さと、試合の流れを変えられる「切り札」の不在。ワールドカップで優勝という目標を公言している以上、この内容では物足りないよね。

「引き分けで良かった」「内容は良かった」と満足していては、永遠にベスト16の壁は越えられないからね。この引き分けを「勝点2を失った」と捉える厳しさこそが、チームを次のレベルへ引き上げるために不可欠なことだよ。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、80歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。

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