【大宮】最後に救世主になり損ねた男――FW清水慎太郎の一瞬の思考

2016年07月24日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「実はそのままオーバーヘッドをしようとも考えた」

64分にN・ペチュニクと交代で出場。身体のキレは良いが今季はまだゴールがなく、千載一遇のチャンスだった88分の決定機も相手GKによって防がれてしまった。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1・第2ステージ5節]大宮 1-2 新潟 7月23日/NACK
 
 試合終了が近付いた88分、スコアは1-2で新潟がリード。相手陣深くの左サイドから、岩上祐三がロングスローを投げ入れた。76分にラファエル・シルバに代わってピッチに入っていた新潟の指宿洋史に、長身を活かして撥ね返される。

【新潟】最後に救世主になった男――GK守田達弥の一瞬の思考
 
 だが、ペナルティアークから再び金澤慎がゴール前へと押し返した。約2秒の出来事に新潟はラインを上げ切れておらず、動き直していた清水慎太郎の近くにボールがこぼれた。明確なチャンス。急展開にも焦りはなかった。
 
 ボールがワンバンドする。後ろに倒れ込むように、バイシクル気味でミートした。自身の身体がブラインドになって、相手GKからは出どころが見えていない。力ないシュートではあったが、確実に枠を捉えていた。
 
 同点――。誰もがそう思った次の瞬間、新潟の守田達弥が必死に伸ばした右腕によって、弾き出されてしまった。両ゴール裏から悲鳴と歓声が入り混じってスタジアムに響く。ピッチに横になった清水が両手で顔の汗を拭った。
 
「実は(ボールがバウンドする前に)そのままオーバーヘッドをしようとも考えた。だけど、相手の選手が被っていて、足の上げ過ぎでファウルになる可能性もあるなと。山越(康平)も詰めていて、上手い具合に相手DFをブロックした形になった。
 
 もう一回落として、ターンして前を向く選択肢もなかったわけじゃない。それをやれば相手に寄せられて、クリアされてしまう可能性が高かったので、ああいう無理な態勢で打った」
 
 ゴールマウスはすぐそこ。超至近距離からのシュートだった。打った瞬間に入ったと思ったのではないか。疑問をそのままぶつけた記者に対し、清水は「当たった感触は良かったけど、ちょっと弱いかなと思った」と予想に反する返答をした。
 
 意外にも、「ゴールの位置も分かってなかったし、適当に打った」というのは本心なのかもしれない。守田の「相手の背中に隠れて、ボールを見えてはいなかった。でも、シュートを打ってくるとしたらあの形(後ろに倒れ込みながらのバイシクル気味)しかない」という言葉を伝えて、再び反応を待った。
 
 ゴールを奪えなかったFWは、少し間を置いた。「相手のGKのほうが一枚上手でしたね。あのシーンで打つとしたら、さっき話したように、ファウル覚悟でひとつ前のタイミングか(実際に打った)あのタイミングしかない」
 
 今節の敗戦で、第2ステージ1節・名古屋戦以降、リーグ戦4試合で勝ち星に見放されている。その意味を、清水は痛感しているようだ。「途中からゲームに入っても、チャンスは必ず1回はくると思っている。そのチャンスをしっかりものにできるようになりたい」

 相変わらず身体のキレは良い。しかし、目に見える結果が遠い。ホームで戦った前々節・G大阪戦ではバーに嫌われたが、今度は"守護神"に阻まれて、そのリベンジとはならなかった。「次こそは得点を取れるように頑張ります」。救世主になり損ねた男は、そう言い残して背中を向けた。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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