【大宮】威風堂々と――山越康平はそびえる壁に挑戦を続ける。

2016年05月14日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

突発的な出場に落ち着いた対応も「出来は30点くらい」。

試合後にエアバトルを課題に挙げたが、仙台のパワープレーにも慌てず。アウェーでの勝点3獲得に貢献した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 0-1で悔しい敗戦となった浦和との"さいたまダービー"を今後に引きずらないためにも、今節・仙台戦は是が非でも勝利が欲しい。そんな一戦は「スタートからボールをテンポ良く動かせ、守備でもむやみに下がらずに対応できた」(渋谷洋樹監督)。結果、1-0で勝利。上位戦線に踏み止まる、大きな勝点3を手にした。
 
 多くの時間帯で主導権を握って試合を進められたが、誤算もあった。そのひとつが、主将として、CBとして、最終ラインでチームを引き締める菊地光将の途中交代だ。「足の違和感」(同監督)という緊急事態に、入れ替わってピッチに立ったのが明治大から加入したルーキーの山越康平だった。
 
 4試合を消化したナビスコカップのグループステージでは全試合でフル出場を果たしているものの、今季リーグ戦では2試合のみの出場(6節・名古屋戦と10節・福岡戦)。名古屋戦は9分、福岡戦は6分間と合わせて15分しかプレーをしていない。それでも、「名古屋戦と福岡戦に比べれば落ち着いて試合に入れた」と、あまり緊張はなかったと言う。
 
 菊地と河本裕之の大宮CB陣を、高さと足もとの技術で苦しめていた仙台のハモン・ロペスを相手にしても、威風堂々と振る舞っていた。焦らず、状況判断を正確に、そして冷静に。最後まで自軍ゴールラインを割らせなかったのだから、及第点以上の出来と言っていいだろう。
 
 だが、山越はこの日のパフォーマンスが決して満足できるものではなかったと言う。「全然ダメ。途中出場の難しさもあるけど、出来は30点くらい。投入されてからの数プレーではやられてしまったし、空中戦で負けていた部分もある。修正点は数多い」
 
 エアバトルでの強さ、クロスに対しての対応、ラインの上げ下げ、コーチング……。日々、勉強しなければならないことは山積みだ。「(スタメンで)出たい気持ちはもちろんある。でも、今の大宮の両CB(菊地、河本)は盤石。プレーを見て、多くを学ばないと(ふたりは)越えられない」
 
 確かに背番号2と背番号3の壁は高い。だからこそ、遠慮なく挑戦する意義はあるのだろう。本人はクラブからの期待も理解している。自身の名のとおり、最終ラインにそびえ立つふたつの山を越える日は、いつ到来するのか。遠くない未来に"三つ巴"となれれば、オレンジ軍団の先行きは明るいに違いない。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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