【札幌】故障からの完全復活へ。荒野拓馬の言葉に滲む決意

2016年05月14日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「(もしスタメンなら)1発、狙っていきたい」

9節・C大阪戦でベンチ入りし、10節・徳島戦で実戦復帰。スタメンが濃厚な今節は完全復活をアピールする絶好の機会だ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 2010年に高校2年生ながら2種登録でリーグ戦デビューを飾り、クラブの最年少出場記録(17歳187日)を樹立。12年にトップチームへと昇格すると、13年には30試合・4得点。昨年までは手倉森ジャパンにも選出されていた。だが……かつてともに戦った仲間たちがリU-23アジア選手権で優勝を決めた時、荒野拓馬はその輪の中にいなかった。
 
 その才能と歩んできたキャリアを考えれば、23歳の若者の現状は決して順調とは言えない。周囲の期待の大きさとは裏腹に、成長曲線は常に右肩上がりだったわけではない。もどかしさは積み重なるばかりだったろう。
 
 リオ五輪の本大会を控えた今季はスタートでまさかの出遅れを喫してしまった。キャンプ中に恥骨を亀裂骨折。初出場は4月29日の徳島戦(1-0)まで待たなければならず、この試合でようやく32分間の出場。復活まで3か月ほどを要した。
 
 そんな男にチャンスが訪れようとしている。開幕から11試合に出場するなどポジションを確保していたジュリーニョが累積警告で次節・水戸戦に出場停止。トップ下での先発が濃厚で、「(もしスタメンなら)一発、狙っていきたい」と虎視眈々だ。
 
 また、様々なポジションをこなせるマルチロールは、「ボールの収まる人が前にいるので、2列目からの飛び出しを意識してプレーしたい。練習では(ヘイスと都倉と)良い距離感でやろうと思っていたし、試合になればもっとできる」と自信も覗かせる。
 
「ボールに触る回数を増やして、チャンスメイクしたい」
 
 練習後の囲み取材で最後に淡々と発せられた、たったこれだけの言葉に強い決意が滲む。チームは好調を維持している。この波に乗り遅れることなく結果につなげ、それを自信にして、さらに良い結果を生む。そんな好循環を作り出せれば、失ったポジションを奪回できるはずだ。
 
 勝負強さと思い切りの良さを兼ね備える荒野は、これまでの遅れを取り戻し、さらなるステップアップを果たせるだろうか。己の両足で切り拓く未来は、きっと輝いているはずだ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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