11戦勝ち無しで混迷深まるJ2仙台。地道に一人ひとりが主体的にチームを作り上げることが今、求められている

2023年08月14日 小林健志

単純なミスなど不用意な失点が相次ぐ

白星から遠ざかる仙台。意思統一の徹底で、浮上のきっかけを掴みたい。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[J2第30節]仙台 0-2 群馬/8月13日/ユアテックスタジアム仙台

 J2優勝・J1昇格を目標とする今季の仙台だが、混迷が深まっている。

 8月13日に行なわれたJ2第30節の群馬戦も、前半は締まったゲームができたものの、50分にDF真瀬拓海が2回目の警告で退場。この時のファウルによるフリーキックから、DF中塩大貴にゴールを決められてしまう。

 さらに72分には、DFキム・テヒョンのファウルによってペナルティエリア近くのゴール正面で群馬にフリーキックを与え、MF風間宏希の直接フリーキックで被弾。0-2で敗戦となった。

 これで3連敗、さらに6月11日の第20節・磐田戦の敗戦以後、11試合勝利無しという厳しい状況だ。

 昨季9月に就任した伊藤彰前監督は、立ち位置を重視するポジショナルプレーをチームに落とし込もうとしたが、難解な戦術のため選手の戦術理解にばらつきが生じ、不安定な戦いが続いた。それでも今年6月上旬までは戦い方の方向性が定まっていき、一時は7位にまで順位を上げた。

 だが、先述の磐田戦以降は、主力の負傷離脱やコンディションの低下などが重なり、勝てない状況が続いた。そして7月13日、伊藤監督の退任が決まり、今季からコーチを務め、浦和、東京Vで監督経験のある堀孝史が監督に就任した。

 しかし、監督交代はここまで思うような効果を得られていない。ある程度、攻守の決め事がシンプルになったが、その切り替えの遅さを解消できず、単純なミスなど不用意な失点が相次いだ。
 
 堀監督就任後は1分4敗。その1引き分けも、第27節・藤枝戦で開始1分に相手DFが退場したにもかかわらず攻めあぐんでのもので、惨憺たる内容の試合が続いている。

 当初の目標である昇格争いからは大きく離れ、現在16位。J3降格圏の21位・徳島とはわずか勝点3差。J3降格の可能性すら生じている。

 それでも群馬戦の前半は、ここ数試合のなかでは最も攻守に秩序だったプレーが見られ、締まった試合ができていた。その要因となったのは、8月上旬に加入し、この試合が初先発となったMF長澤和輝とMF齋藤学だ。

 特に長澤は中盤でボールを落ち着かせ、いくつか決定機の起点となるパスを出したり、自らもゴール前に顔を出したりと、絶大な存在感だった。齋藤も良い位置取りから決定機に絡む場面があった。

 堀監督は長澤、齋藤のプレーに関して「合流して間もないのですけど、準備の段階から他の選手たちとコミュニケーションを取ってくれて、彼らの経験をしっかりとチームに与えてくれました。ゲームのコントロールという部分で、チームに貢献してくれた部分はあったと思います」と高く評価した。

 しかし1失点後の54分に、長澤と齋藤は交代。その後は攻守の秩序が薄れた印象で、攻撃は散発になり、失点シーン以外にも不用意なピンチを招く場面が増えた。

「慌ててしまうとか、我慢しきれないとか、そういうことをなくして、90分のゲームをしっかりと狙いを持って攻守において続けるよう踏ん張りたい」と、堀監督も何とかコントロールが失われる状況を解消しようとしているが、現状はまだ上手くいっていない。

【PHOTO】熱い歌声で選手を後押ししたベガルタ仙台サポーター!

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