【クラブW杯】決勝弾の起点になった柏好文。「世界に広島のサッカーを発信できた」と胸を張る

2015年12月20日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「途中出場の選手が勝負を決定づけられるチームは強い。今の広島はそれができる」(柏)

ジョーカーの役割を完遂した柏(右)は、来季のACLに向けて手応えを得たようだ。 (C)Getty Images

 右サイドの柏が仕掛けて、広島にゴールが生まれる――。Jリーグ・チャンピオンシップ決勝のデジャブのようだった。

 ドウグラスの決勝弾で広島が広州恒大との"アジア対決"を制したが、その起点となったのが柏だった。1点ビハインドの67分、「(同点に)追い付くしかない」と気合いを入れてピッチに立つと、「全部カシ(柏)のほうから行け!」という森保監督の指示どおり、次々と1対1で崩しにかかる。

 とりわけ、対面のSBリ・シュエポンとの攻防は見応えがあった。168センチの柏に対し、相手は185センチと身長差は実に17センチ。ファウルをしてでも必死に止めに来るリ・シュエポンに何度も倒されながら、スピードと横のゆさぶりを交えてクロスを供給。得点シーンでは、左に行くと見せかけて右に抜いて振り切り、ゴール前に上げたボールがドウグラスの2点目につながった。

「(2点目の場面は)自分の間合い、形でボールを運べたのが大きかったですね。相手は間延びしていたし、疲れていたので、どんどん行けばチャンスはできるなと。チームとして『フレッシュな選手を使う』という意志の疎通もできていて、徹底してそこを突けた」

 柏は勝負が決した場面をこう振り返る。「途中出場の選手が勝負を決定づけられるチームは強い」。オークランド・シティとの開幕戦でも訊かれた言葉が、再び柏の口を突いて出た。これは、どの選手が出ても同じクオリティでチームコンセプトを完遂できる今季の広島の強みを凝縮したフレーズだが、アジア王者の広州相手に逆転勝利という形でそれを体現できた点に意味があると柏は語る。
 
「0-1からひっくり返して、広州に(僕らの)底力を思い知らせることができました。『1点取られたくらいじゃ試合は決まらない』『チャンスは何度でも作れる』というつもりでやっているし、入りこそ悪かったですけど、1点で抑えたからこそ、2点取れたと思います。自分たちのサッカーを見せて、勝てたことは来年ACLを戦ううえで大きい」
 
 クラブワールドカップを通し、身体能力では勝てなくとも、粘り強さや球際の激しさ、チームとしての総合力、戦術の緻密さを駆使すれば戦える手応えがあったという。
 
「世界に広島のサッカーを発信できた。その意味では良い大会でした。個人としても、チームとしても、技術を上げて行けば世界にも通じると思います」
 
 リーグ制覇、そしてクラブワールドカップ3位の勲章を手にする原動力となった広島の"翼"は、新たに見つけた世界と戦う喜びを追い求めて、再び羽ばたき出す。

【PHOTOハイライト】広島 2‐1 広州恒大

取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
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