【クラブW杯】広州恒大の「ブラジル・カルテット」で眩い輝きを放った攻守万能のボランチ

2015年12月13日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

「ヨーロッパで通用しなかった終わった選手」。そんな見方もされたが…。

左サイドを突破して同点弾の起点になり、CKにヘッドで合わせて決勝点! パウリーニョはふたつの大きな仕事で準決勝進出に貢献した。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 広州恒大の最大の売りが、潤沢な資金力を背景に引き抜いた「ブラジル・カルテット」だ。点取り屋のエウケソン、2014年にブラジル・リーグMVPに輝いたグラール、14年W杯に出場したパウリ―ニョ、そしてR・マドリーやミランなど欧州のメガクラブを渡り歩いたロビーニョは、いずれもセレソン選出経験のある名手である。

 12月13日のクラブワールドカップ準々決勝のクラブ・アメリカ戦でも、この4人は揃ってスタメンに名を連ねた。ただ、序盤こそ良い距離感を保ちブラジル人らしい細かいパスワークを見せたが、チームが徐々に間延びしたため影響もあって、前半半ば過ぎからはコンビネーションが機能しなくなった。

 個々を見ても、左ウイングのロビーニョはさすがの技巧を見せたもののハーフタイムに退き、CFのエウケソンは起点にこそなったがフィニッシュで存在感を示せず。トップ下のグラールに至っては、ミスを繰り返してイライラを募らせるなど低調だった。

 そんななかで、格段の存在感を放ったのが、ボランチのパウリ―ニョだ。守備では最終ラインの手前で危機察知能力と出足の良さを活かして防波堤となれば、攻撃では正確な繋ぎとオーバーラップを披露した。

 80分には左サイドをドリブルで駆け上がって同点ゴールの起点となり、90+3分にはCKからヘディングで歓喜の逆転ゴール。ふたつのビッグプレーで広州恒大の逆転勝利に貢献し、この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

 2012年にコリンチャンスの一員としてクラブワールドカップ優勝を飾り、翌年夏にはトッテナムに移籍。しかし、14年のブラジル・ワールドカップでセレソン敗退の戦犯のひとりに挙げられ、トッテナムでも定位置を失ったボランチは、15年7月に広州恒大へと新天地を求めた。

 26歳でヨーロッパを後にし、辺境の中国に渡ったこの決断は、「ヨーロッパで通用しなかった選手」、「終わった選手」、「カネに目がくらんだ選手」という見られ方もされた。しかし、この日のパフォーマンスを見れば、そんな陰口を叩く者はいないだろう。

「僕だけでなく、チームそのものの姿勢とパフォーマンスが良かった。ビハインドにも動じず、一丸となって逆転できた」

 試合後、謙虚にそう語った攻守万能のボランチは、優勝候補筆頭のバルセロナと激突する準決勝でも、広州恒大における最大のキーマンになるに違いない。

【PHOTOハイライト】クラブ・アメリカ 1-2 広州恒大

取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)
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