【クラブW杯|取材記者の視点】いわば相手に“お付き合い”した広島。再びアクシデントに見舞われれば一気に窮地に追い込まれたはずだ

2015年12月10日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

先制後は眠っていた広島が再び目覚めたのは、56分のドウグラス投入以降。

先制点を奪った後、スローダウンした広島が再び目覚めたのは56分のドウグラス投入以降。疲労があったとはいえ、力の差はあっただけに早々に試合を決めることもできたはず。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 技術的にも戦術的にも、サンフレッチェ広島に一日の長があったのは明らかだ。それでもオークランド・シティ相手に2-0の"辛勝"に終わったのは、広島が相手に"お付き合い"したからだ。

【PHOTOハイライト】広島 2-0 オークランド・シティ
 
 序盤から広島は、最終ラインからリズミカルにパスをつなぎ、両WGに展開する十八番の攻撃パターンで試合の主導権を握る。9分には、そのサイドアタックで得たCKからのこぼれ球を皆川が押し込み、先制にも成功した。
 
 しかし、その後に広島は完全にペーススダウン。WGを含めれば実質5バックになる最終ラインを低めに設定して敵の攻撃を待ち構えるパターンは、Jリーグでもお馴染みだ。
 
 ただし、それもボール奪取後に逆襲速攻を仕掛けてこそ意味があるものだろう。27分に皆川が右足で狙うまで、約20分間も1本のシュートも放てずにいるなど引き籠るばかりだった広島の戦い方は、お世辞にも褒められたものではなかった。
 
 同じく最終ラインからパスをつなぐ意識が高いものの、崩しの局面のアイデアとクオリティーを欠いて攻撃のスイッチが入らないオークランド・シティのスローペースに、いわば"お付き合い"してしまった格好だ。
 
 自分たちがミスしない限りフィニッシュに持ち込めないオークランド・シティの真価を体感したはずの広島は、先制ゴールの後にもっと積極的にゴールを狙い、試合を決めてしまうくらいの気概が必要ではなかったか。リスク回避優先で時計の針を進める"省エネ"は、それからでも遅くはなかったはずだ。
 
 後半もこの"お付き合い"は続き、再びインテンシティーが高まったのは、スタメンの野津田が14分に故障退場し、その代役の柴崎までも怪我に倒れて出番が回ってきたドウグラスが投入された56分以降だ。
 
 このブラジリアンが懐の深いボールキープと裏への抜け出しで攻撃を活性化し、70分には左サイドから右サイドを駆け上がった塩谷へパス。そのまま敵陣ペナルティーエリアに侵入して放ったシュートが、敵DFに当たってゴールマウスに吸い込まれた。
 
 実質的に試合はこれで決した。しかし、あえて繰り返すが、実力差を考えれば広島は前半に2、3ゴールを奪えたはずだし、もっと試合を優位に進められたはずだ。
 
 野津田と柴崎に続き、65分には清水も足を痛めてピッチを退き、まだ1-0だった残り25分の段階すでに交代枠を使い切っていた。仮にその後に失点するか、さらなる怪我人が出ていれば、一気に窮地に追い込まれたはずだ。
 
 佐藤、ドウグラス、森崎和という主力3人を温存し、長いシーズンで溜まった蓄積疲労、そしてそれに伴う故障者続出というアクシデントなど、情状酌量の余地がなくはない。
 
 とはいえ、12月13日の準々決勝の相手は、オークランド・シティよりも明らかに格上のマゼンベ。この日のようなゲームマネジメントのミスは許されない。

文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事