【日本代表】「タフなゲームになる」イラン戦に向け、香川が出したのはシンプルな答え

2015年10月12日 五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)

強豪イランとのゲームで背番号10は輝きを放てるのか。

「ボールを回せない時も想定しなきゃいけない」と香川。ただ、高さに付き合うのではなく「足もとであったり、低いボールで勝負している」と基本線をブラすつもりはない。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアの強豪国とはいえ、選手たちにとってイランとの接点はほぼないに等しい。約10年前、ジーコジャパンが煮え湯を飲まされたアウェーでのイラン戦(1-2)を、今の選手たちは記憶すらしていない。吉田は「当時の試合を覚えているか?」との問いに「全然覚えてないですね」と笑い、武藤も「知らないです」。香川もまた、「あんまり覚えてないですね」と神妙な面持ちで語った。
 
 1997年に初のワールドカップ出場を決めたジョホールバルの話を持ち出して、ようやく「ああ、ワールドカップ出場を決めた試合ですか」(香川)と答えるほどだ。
 
 選手たちにとってのイランは、それ以上でもそれ以下でもない。つまりは、初の顔合わせとなるアジアの強豪という判然としたイメージで、スカウティングで得た「オマーン戦を見ましたけど、個々の能力はやっぱりシリアとかよりも高いですし、彼らのホームですからより厳しく来るんじゃないかと思っています」という情報がすべて。それだけに、香川の頭の中はシンプルだ。
 
「やはり中央で普通に競り合っても勝てないので、工夫しなければいけない。ロングボールだけでは厳しいので、しっかり足もとで(回す)。そういう意味では動き出しの準備や質を、この前よりもさらに上げて良い駆け引きをしていきたいなと思っています」
 
 さらに、高さについて踏み込んだ質問をしても、「高さがあるにしろないにしろ、僕たちは足もとであったり、低いボールで勝負していますし、それが基本的(な戦い方)になってきていると思う。クロスを上げるにしても、そういうところは意識したいです。ボール回しもそうですけど。フィジカルが強い相手に対しては、より動き出しの質を準備して行かないといけないと思っています」と足もとの重要性を繰り返した。
 
 日本の前線は香川を始め、岡崎や宇佐美と軒並み170センチ台が並ぶ。空中戦で勝負できそうなのはフィジカルに長けた本田と武藤くらいで、分が悪いのは明らかだ。香川が"活路を開くのは地上戦"だとの結論に行き着くのは当然だろう。
 
 興味深いのはその先である。FIFAランクが上の相手とのアウェー戦は苦戦も予想されるが、その時の対応こそ日本代表の課題だと香川は言う。
 
「ボールを回せない時も想定しなきゃいけない。前半は特に彼ら(イラン)が飛ばしてくると思うし、やっぱりフィジカル的なサッカーになってしまうと思うので、そういう時でもブレずに、お互いの連係であったり、動き出しを意識しながらやっていけたらと思います」
 
 押し込まれたとしても、単調なロングボールの放り込みに付き合うのではなく、ブレずに距離感を縮めて地上戦を挑む。つまりは、シリア戦の前半で噴出した反省点を、イラン戦で修正しようというのだ。
 
 シリアよりも力のある相手に対して、それが可能なのか。期待よりも不安が先行するものの、仮に香川の言葉を実現できれば間違いなくステップアップにつながる。
 
「どの試合もタフになると思うので、しっかり準備して試合を迎えたい」
 
 ハリルホジッチ体制下で迎える初めてと言ってもいい強豪との"タフ"なゲームで、香川は輝きを放ち、チームを勝利に導けるのだろうか。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェストWeb)
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