アビスパらしさが消えている…“集大成”の神戸戦で手痛い敗戦。指揮官は試合後、選手たちに何を語り掛けたか

2022年10月02日 中倉一志

9試合連続で先制点を献上、そのうちの8試合は前半に失点

今季の大一番として臨んだ神戸戦は0-1の敗戦。残り3試合、福岡は自分たちらしさを取り戻して残留争いを勝ち抜けるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第31節]福岡0-1神戸/10月1日/ベスト電器スタジアム

 この日、ベスト電器スタジアムに足を運んだのは1万993人。ウォーミングアップで選手たちがピッチに登場すると、チャントと手拍子がスタジアムを包み、それはキックオフのホイッスルとともに最高潮に達した。だが、その声援も勝利には届かなかった。

「これだけサポートをくださったファン、サポーター、スタジアムに運んでくれた方たち、お客様、また、テレビの前で応援してくださったのに、こういう結果で大変申し訳なく思う。こういう時に勝たなければという想いは強いが結果は残念だった」(長谷部茂利監督)

 その表情は、これまでのどの敗戦よりも悔しさに溢れていた。

 リーグ1の堅守を誇っていたアビスパらしさが消えている。

 前半戦に7試合を数えた無失点試合は、後半戦はここまで3試合。22節・湘南戦でスコアレスドローを記録したのを最後に、以降は9試合連続で先制点を奪われ、しかも、そのうちの8試合は前半のうちに失点している。

 最大出力を発揮して、ぎりぎりの勝負に持ち込み、少ないチャンスを得点に結び付けて勝点を重ねてきたが、それができなくなっている。
 
 要因は1つではないが、高い位置からボールを奪いに行く守備と、ロングボールを前線に送る攻撃を対策され、自分たちのリズムで試合を進められないことが守備に影響を与えている。

 そんな状況をDF宮大樹は次のように話す。

「あっさりと相手にチャンスを与えるようなシーンが多い。ロングボールに対して誰も競りに行けなくて収められてしまったり、自陣でのパスミスが起きてしまって押し込まれたり、良い時だったら絶対に起こり得ないミスが多い。

 まず1人ひとりがちゃんと意識を高く持ってやらないといけないし、連動云々ではなく積極性が足りないと感じた。ピッチで誰が表現しなければいけないかと言えば、試合に出ている11人。

 これからの3試合は、もっと球際の部分や、ミスした選手に対してチームが上向きになるような声掛けなどがより大事になってくる。もっと一致団結してやっていかないといけない」

 アビスパにとっては手痛い敗戦。今シーズンの大一番として臨んだ神戸戦での敗戦に、ロッカールームを引き上げる選手たちの表情は一様に暗い。残留争いのライバルたちが粘り強く勝点を積み上げていくのとは対照的に、勝点を落とし続ける自分たちへの情けなさを感じているようにも見える。

 とはいえ、残留争いは勝点4の中に6チームがひしめき合う大混戦(17位から12位)。アビスパは勝点31の16位。生き残るための道が見えなくなったわけではない。しかし、下を向いた瞬間にその道は消える。

 神戸戦を迎えるにあたって、長谷部監督は「今シーズンの集大成と思って挑む。今後のアビスパ福岡を象徴していくようなゲームになる」と話した。残念ながら、この日はそれをピッチで表現することはできなかった。

 試合後のロッカールームでは「いろんな意味で本当に残念な敗戦。一度気持ちが落ちるのは当たり前、落胆するのは当たり前。でも次の試合に向けて、顔を上げて、目線を上げて、『残留』この二文字を掴もう」と選手たちに語り掛けたという。

 残るチャンスは3試合。自分たちらしさを取り戻すことができるのか。それがアビスパの未来を決める。

取材・文●中倉一志(フリーライター)

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