浦和に攻勢も無得点の湘南。阿部浩之が「決めなければいけない」と厳しく指摘するワケ「上積みはできると思っている」

2022年09月19日 隈元大吾

指揮官不在も攻守に能動的な戦いを表現

チームは下位に沈むも、確かな手応えを感じている阿部。「点を取れるようになっていくと思っています」と言葉に力をこめる。写真:滝川敏之

[J1第30節]湘南0-0浦和/9月17日/レモンガススタジアム平塚

「勝たなければいけない試合だった」と、たとえば杉岡大暉が唇をかんだように、悔しさが選手たちの口をついたのは、攻勢を傾けたその内容にあったろう。

 浦和をホームに迎えた今節、目まぐるしく攻守が入れ替わるタフな展開のなかで、湘南は連動した守備から素早く攻撃に転じ、序盤から流れを手繰り寄せた。

 前線のウェリントンを起点にしつつ、小気味よくワンタッチを織り交ぜ、幅を活かしていく。アンカーの茨田陽生を中心に縦パスも多く、池田昌生や石原広教が絡んで右サイドを打開し、瀬川祐輔がフィニッシュに持ち込めば、左ウイングバックの中野嘉大のクロスに石原が大外から走り込み、ヘッドで合わせるシーンもあった。

 前半終了間際には、池田が相手のパスミスを逃さずショートカウンターに転じ、ウェリントンがGK西川周作との1対1を迎えもしたが、しかしいずれも枠を捉えきれない。

 もちろん浦和も防戦に甘んじていたわけではない。江坂任を中心にボールを動かしながら、キャスパー・ユンカーのスピードを活かして湘南のハイラインの背後を狙う。

 前半の飲水後には、江坂のロングフィードに抜け出したユンカーがシュートに持ち込みもした。立ちはだかったのはGK谷晃生だ。予測とポジショニングの賜物だろう、果敢に飛び出して背後のスペースをカバーし、不意に訪れる決定機も鋭い反応で防いだ。

 後半に入り、さらに浦和は選手交代とともに攻勢を強めていく。シュート2本にとどまった前半とは一転、フィニッシュも重ねるが、谷を中心とする湘南の守備もまた粘り強い。

 かたや湘南も再び攻め込み、飲水後には途中出場の阿部浩之や山田直輝らの連係から枠を脅かす。だが西川の好守もあり、こちらも最後までゴールには届かず、一戦はスコアレスドローで決した。

 阿部が自省とともに厳しく振り返る。

「僕自身を含めて、あれだけシュートシーンがあったら決めなければいけない。前の選手は特に、ひとつの(シュートの)大事さをもっと噛みしめなければいけないと思っています」
 
 今夏加入したベテランがそう直截に指摘するのは、新たなチームメイトと時間を重ねるなかで、確かな手応えを感じているからに違いない。

 ある時、こんなふうに語っている。

「初めの頃に比べて意見交換ができているし、少しずつですけど上積みはできると思っている。それがゴール前で必要なプレーの速さにも繋がってくる。ちょっとずつ擦り合わせはできていると思うので、チームとして点を取れるようになっていくと思っています」

 今節は山口智監督が新型コロナウイルスの陽性判定を受けて不在だった。指揮官がいないなかで、自分たちらしい攻守に能動的な戦いを表現したこともまた、見逃せないポジティブな成果と言えるだろう。

「この強度やレベルで、あと5試合しっかりやるだけ」と杉岡は語り、阿部も「練習からチームとしてゴール前の崩しやバリエーションをもっともっと増やしていけたら」と前を見据えた。

 次節まで2週間、再びトレーニングを重ねて課題と向き合い、自分たちの戦いを突き詰める。

取材・文●隈元大吾

【PHOTO】アメリカ・エクアドルとの親善試合に挑む日本代表招集メンバーを一挙紹介!

【J1第30節PHOTO】湘南0-0浦和|両チームとも果敢に攻めるもチャンスを決めきれず、結果はスコアレスドロー

【PHOTO】平塚に集結!熱戦を後押しした湘南&浦和サポーター
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事