【柏】広島相手に完勝。吉田監督が仕掛けた3つの“罠”

2015年08月17日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「第1ステージで置いてきた忘れ物を、1分でも1秒でも早く取り返したい」(吉田監督)

「CF武富」「ウイング工藤」とともに機能したアンカーの茨田(8番)。攻撃では本来のビルドアップ役、守備では5バックの中央に入って広島の攻撃を撥ね返し、与えられたタスクを見事にこなした。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

「サンフレッチェは今、日本で一番強いチーム。向かっていこう!」
 
 吉田監督は試合前、選手たちにそう声をかけたという。そして、Jリーグ1年目の若き指揮官は、首位・広島との大一番で3つの"罠"を仕掛けてゲームに臨んだ。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・7節

 第一手は「武富孝介のCF起用」だ。今季はインサイドハーフとウイングを兼任させてきたが、スピードと走力に長けるハードワーカーをチェイス役として最前線に配置。広島のビルドアップの起点となる千葉和彦や森﨑和幸にプレッシャーをかけて、相手のペースアップを封じた。
 
 連動して機能した第二手が、「工藤壮人のウイング起用」。第2ステージでは基本CFに固定してきたエースをスライドさせた背景には、機動力を活かして対面の選手の行く手を阻み、広島のサイド攻撃を封じようとした意図が見て取れる。事実、工藤が「水本選手にボールを渡さず、逆サイドのほうに上手く持っていけた。特に前半は、(相手の)左サイドには仕事をさせなかったと思う」と胸を張るように、最終ラインの自由を奪い、好調な左WB柏好文への展開を制限した。
 
 そして、3つ目はアンカー茨田の使い方だ。第1ステージの対戦では、5バックにするか、4バックにするか、曖昧な部分があり、そのわずかな綻びを突かれて敗れた。その反省を踏まえ、「守備時は5バック、攻撃時にはいつものオーガナイズでいく」(茨田)と役割を明確化。サイドからのクロスでチャンスを作られるシーンは何回かあったものの、中央を固めて広島の1トップ+2シャドーを抑え、サイド偏重の攻撃に仕向けた。
 
 これらをより効果的にしたのが、クリスティアーノの先制点である。開始3分、キム・チャンスのボール奪取から小林祐介→クリスティアーノと「レイソルのパスをつなぐサッカーが表われていた」(クリスティアーノ)形で幸先良く1点を奪ったことで、カウンターからチャンスを迎えるシーンが増加。結果として、クリスティアーノのハットトリックにもつながった。
 
 第2ステージの勝利はいずれも完封と、不安定だった守備は徐々に改善しつつある。また、自分たちのサッカーを確実に体現できるようになっている点、優勝争いをする広島を寄せ付けなかった点はチームの自信になるのは間違いない。勝点を15に伸ばして第2ステージ3位をキープ、年間勝点でもついに一桁の9位に浮上したが、吉田監督と選手たちの目はすでに先を見ている。
 
「我々は第1ステージでたくさんの忘れ物をしてきた。それを1日でも、1分でも1秒でも早く取り返したいという思いでやっている。連勝したと言っても、次から次に試合がやって来るし、しっかりと引き締めてこれから臨んでいきたい」(吉田監督)
 
「タイトルを奪取できるサッカーが魅せられている。このまま優勝を狙って頑張りたい」(クリスティアーノ)
 
 勝利とともに成長を続ける太陽王の"反攻"は、まだ始まったばかりだ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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