【清水】「ゴールへの欲は捨てた」鄭大世は、低迷するチームに落ち着きをもたらせるか

2015年07月25日 田中芳樹

古巣・川崎とのデビュー戦にも「できることをしっかりするだけ」。

黙々と練習をこなす鄭。自分のゴールよりもチームの勝点奪取を第一に、「運命のいたずら」と語る古巣・川崎戦に臨む。

 前節の名古屋戦、相手がひとり少ないなかでも二度のリードを守れずドローに終わった。第2ステージはいまだ1勝もできず、年間順位も再び最下位に転落。低迷の要因は考えられるが、ひとつ挙げるとすれば、試合中のメンタルに問題があると思える。
 
 清水は先制点を奪った試合で3勝3分1敗と、勝ち切れない試合が多い。また、逆転勝利を挙げた試合にいたっては、これまでゼロ。さらに、第1ステージの8節・山形戦で85分から9分間で3失点したように、一度崩れると立て直すことができないのだ。"負け癖"がついてしまっている、とも言えるだろう。
 
 そんなチームの救世主となるべく、ひとりのストライカーが加入した。10年の川崎以来、5シーズンぶりにJクラブへ帰還した鄭大世だ。20日の練習試合で実戦デビュー。サテライト中心のメンバー構成だったことも影響してか、あまりボールには絡めなかったが、パスを引き出す動きを惜しまず走り回った。そして、少ないながらもチャンスがあればシュートを放つ。ゴール前の迫力は失っていない。
 
 これまでは自信でシュートを打つことしか考えていなかった。自分のことで手一杯。良いプレーをしなければと焦り、「ビッグゲームになるほど力を発揮できなかった」と話す。そうしたメンタルは、負けられないゲームが続く、今の清水が抱える問題と重なるかもしれない。
 
 しかし、鄭は学んだ。「ゴールへの欲は捨てた」とも言い切る。その達観したような発言は、「『怖さがなくなった』と言われると思うが、今は年間を通して勝点の獲得に貢献できる選手になった」ということ。彼のような選手がひとりいるだけで、チームには落ち着きが生まれるはずだ。
 
 清水でのデビュー戦は、「運命のいたずら」のような古巣・川崎戦。「できることをしっかりとするだけ」と語る助っ人が、清水に新しい風を吹かせるか。
 
取材・文・写真●田中芳樹(フリーライター)
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