常にアグレッシブな姿勢を失わないミハ・トリノ。
■トリノ
セリエA前半戦最大のサプライズを挙げるなら、文句なしで6位のアタランタだろう。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が生え抜きの若手を大抜擢したところから、それまで降格ペースだった流れが一変し、9月から11月にかけて9試合を8勝1分で駆け抜け、ローマ、ナポリと3位を争うという躍進を果たした。
しかし、後半戦を視野に入れて考えると、アタランタにこれ以上の「伸びしろ」があるとは少々考えにくい。その観点から見てむしろ期待できそうなのは、現在8位のトリノほうだ。
指揮官のイタリア代表監督就任によって足かけ5シーズン続いたジャン・ピエロ・ヴェントゥーラ体制に終止符が打たれた今夏、ウルバーノ・カイロ会長とジャンルカ・ペトラーキSDは、これまでの「セリエA中位定着」から「ヨーロッパ(EL)進出」にハードルを一段上げて新たなサイクルを構築すべく、前任者とはまったくタイプの異なるシニシャ・ミハイロビッチを新監督に迎えた。
自陣で相手を待ち受けて逆襲する受動的なサッカーから、前に出る守備で自らボールを奪いそのまま相手に一気に襲いかかる能動的かつアグレッシブなサッカーへ。指揮官の人柄とメンタリティーをそのまま体現したようなスタイルで、トリノは18節まででリーグ3位タイの36得点を挙げてきた。
特筆すべきは、常に勝利を狙って戦うその挑戦的なメンタリティー。首位ユーベとのトリノ・ダービー(12月11日)では、1-1で迎えた残り10分で選手を一気に3人交代して勝ちにいったミハイロビッチの采配は、その象徴だ。
アグレッシブなプレッシングでボールを奪うと、ピッチ中央に陣取った司令塔ミルコ・ヴァルディフィオーリが質の高い縦パスを送り込み、それに反応して前線の3トップだけでなくダニエレ・バゼッリ、マルコ・ベナッシという2人のインサイドハーフも敵陣深くに入り込んで攻撃に絡んでいく。右のイアゴ・ファルケ、左のアデム・リャイッチの両ウイングの1対1突破、強靭なフィジカルを誇るCFアンドレア・ベロッティの力強いフィニッシュと、3トップの実力もセリエAトップレベルだ。
ややばたつきがちなゲームマネジメントが改善され、状況に応じて試合をコントロールできるような成熟度を手に入れれば、このトリノはラツィオ、フィオレンティーナ、ミランなどとEL出場権を争う可能性を十分に秘めている。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
セリエA前半戦最大のサプライズを挙げるなら、文句なしで6位のアタランタだろう。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が生え抜きの若手を大抜擢したところから、それまで降格ペースだった流れが一変し、9月から11月にかけて9試合を8勝1分で駆け抜け、ローマ、ナポリと3位を争うという躍進を果たした。
しかし、後半戦を視野に入れて考えると、アタランタにこれ以上の「伸びしろ」があるとは少々考えにくい。その観点から見てむしろ期待できそうなのは、現在8位のトリノほうだ。
指揮官のイタリア代表監督就任によって足かけ5シーズン続いたジャン・ピエロ・ヴェントゥーラ体制に終止符が打たれた今夏、ウルバーノ・カイロ会長とジャンルカ・ペトラーキSDは、これまでの「セリエA中位定着」から「ヨーロッパ(EL)進出」にハードルを一段上げて新たなサイクルを構築すべく、前任者とはまったくタイプの異なるシニシャ・ミハイロビッチを新監督に迎えた。
自陣で相手を待ち受けて逆襲する受動的なサッカーから、前に出る守備で自らボールを奪いそのまま相手に一気に襲いかかる能動的かつアグレッシブなサッカーへ。指揮官の人柄とメンタリティーをそのまま体現したようなスタイルで、トリノは18節まででリーグ3位タイの36得点を挙げてきた。
特筆すべきは、常に勝利を狙って戦うその挑戦的なメンタリティー。首位ユーベとのトリノ・ダービー(12月11日)では、1-1で迎えた残り10分で選手を一気に3人交代して勝ちにいったミハイロビッチの采配は、その象徴だ。
アグレッシブなプレッシングでボールを奪うと、ピッチ中央に陣取った司令塔ミルコ・ヴァルディフィオーリが質の高い縦パスを送り込み、それに反応して前線の3トップだけでなくダニエレ・バゼッリ、マルコ・ベナッシという2人のインサイドハーフも敵陣深くに入り込んで攻撃に絡んでいく。右のイアゴ・ファルケ、左のアデム・リャイッチの両ウイングの1対1突破、強靭なフィジカルを誇るCFアンドレア・ベロッティの力強いフィニッシュと、3トップの実力もセリエAトップレベルだ。
ややばたつきがちなゲームマネジメントが改善され、状況に応じて試合をコントロールできるような成熟度を手に入れれば、このトリノはラツィオ、フィオレンティーナ、ミランなどとEL出場権を争う可能性を十分に秘めている。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。