「ブラジル・ワールドカップは自信になった」
「ボールプログレッションを意識するようにはしている」2014年7月29日号掲載
――ボールプログレッションとは、簡潔に言えば「ボールを前に運ぶ」ですが、これも今季の特長のひとつだったと思います。
「攻撃に関して、俺の中では昔から基本としている部分でもある。しょっちゅう言っているのは『相手の最終ラインと勝負する』だ。そこに人数をかけてゴールを狙う」
――昇格を決めた39節・福岡戦の山本選手のゴールは、まさにその形からだったと思います(編集部・注/船山と岩上が仕掛けたカウンターは相手に止められるも、後ろから攻め上がってきていた山本がこぼれ球を拾い、ゴールを決める)。
「そうだろうな。山本はかなり長い距離を走っているはずだ。我々は自陣のペナルティーエリアから相手のペナルティーエリアまで走るのは基本路線でもある。総走行距離は相手と同じでも、スプリント(短い距離を全力で走る)の回数と距離はまったく違う。絶え間なく動き続け、攻撃にも守備にも関わる。日本ではまだそこまでフォーカスされている戦術ではないけど、ドルトムントなら当たり前のようにやっていることだ」
――“90分間、フルパワー”というハードワークも、それは無理なのでは、というこちらの疑念に対して、「できる。大丈夫だよ」と力強く言い切っていました。
「できた試合はけっこう多かったでしょ。まあ、J2はハイプレッシャーで行けば、相手もミスをしてくれる場合もあるけど、J1ではそうはいかないと思っている。そこはこれから精査して、考えていかなければならない」
◆ ◆ ◆
――以前、「3年は何かしらの結果を出すターム」と言っていましたが、就任から3年でJ1昇格を成し遂げました。これまでの過程を振り返ったりすることはありますか?
「あまり振り返る余裕はないね。その時々で考え方も変わってくるから。ただ、ブラジル・ワールドカップは自信になった。我々が目指すサッカーで、チリやメキシコが印象的な戦いを見せていたから、やっていることは間違ってないんだ、と」
――続投も正式に決まりましたが、来季に向けて、現時点での意気込み、ビジョンを聞かせてください。
「戦略的にはまだそこまで深く考えていないけど、J1が初めての選手もたくさんいるから、ハングリーさを前面に出していきたい。それが我々の良いところでもあるしね。難しい戦いになるのは承知のうえだけど、でもやってみなければ分からない。J1で戦える権利を得たわけだから、思う存分やってほしい。俺もその手助けはするし、やれることは全部やる。クラブ力にしても高いわけではない。それならば、潔く戦うしかない。潔く挑む。潔く散る。潔く……もしかしたら上に行くかもしれない。それでいいと思うよ」
■プロフィール
そりまち・やすはる/ 1964年3月8日生まれ、埼玉県出身。現役時代は全日空/横浜F、平塚に所属し、攻撃センスに優れるアタッカーとして活躍した。97年の引退後は指導者の道に進み、新潟、湘南でJ1昇格を成し遂げたほか、北京五輪代表でも指揮を執る。12年に現職に就任して、今季自身3度目となるJ1昇格を達成。緻密な戦略家でありながら、優れたモチベーターとしての顔も持つ指揮官だ。
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)
インタビュー写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)
――ボールプログレッションとは、簡潔に言えば「ボールを前に運ぶ」ですが、これも今季の特長のひとつだったと思います。
「攻撃に関して、俺の中では昔から基本としている部分でもある。しょっちゅう言っているのは『相手の最終ラインと勝負する』だ。そこに人数をかけてゴールを狙う」
――昇格を決めた39節・福岡戦の山本選手のゴールは、まさにその形からだったと思います(編集部・注/船山と岩上が仕掛けたカウンターは相手に止められるも、後ろから攻め上がってきていた山本がこぼれ球を拾い、ゴールを決める)。
「そうだろうな。山本はかなり長い距離を走っているはずだ。我々は自陣のペナルティーエリアから相手のペナルティーエリアまで走るのは基本路線でもある。総走行距離は相手と同じでも、スプリント(短い距離を全力で走る)の回数と距離はまったく違う。絶え間なく動き続け、攻撃にも守備にも関わる。日本ではまだそこまでフォーカスされている戦術ではないけど、ドルトムントなら当たり前のようにやっていることだ」
――“90分間、フルパワー”というハードワークも、それは無理なのでは、というこちらの疑念に対して、「できる。大丈夫だよ」と力強く言い切っていました。
「できた試合はけっこう多かったでしょ。まあ、J2はハイプレッシャーで行けば、相手もミスをしてくれる場合もあるけど、J1ではそうはいかないと思っている。そこはこれから精査して、考えていかなければならない」
◆ ◆ ◆
――以前、「3年は何かしらの結果を出すターム」と言っていましたが、就任から3年でJ1昇格を成し遂げました。これまでの過程を振り返ったりすることはありますか?
「あまり振り返る余裕はないね。その時々で考え方も変わってくるから。ただ、ブラジル・ワールドカップは自信になった。我々が目指すサッカーで、チリやメキシコが印象的な戦いを見せていたから、やっていることは間違ってないんだ、と」
――続投も正式に決まりましたが、来季に向けて、現時点での意気込み、ビジョンを聞かせてください。
「戦略的にはまだそこまで深く考えていないけど、J1が初めての選手もたくさんいるから、ハングリーさを前面に出していきたい。それが我々の良いところでもあるしね。難しい戦いになるのは承知のうえだけど、でもやってみなければ分からない。J1で戦える権利を得たわけだから、思う存分やってほしい。俺もその手助けはするし、やれることは全部やる。クラブ力にしても高いわけではない。それならば、潔く戦うしかない。潔く挑む。潔く散る。潔く……もしかしたら上に行くかもしれない。それでいいと思うよ」
■プロフィール
そりまち・やすはる/ 1964年3月8日生まれ、埼玉県出身。現役時代は全日空/横浜F、平塚に所属し、攻撃センスに優れるアタッカーとして活躍した。97年の引退後は指導者の道に進み、新潟、湘南でJ1昇格を成し遂げたほか、北京五輪代表でも指揮を執る。12年に現職に就任して、今季自身3度目となるJ1昇格を達成。緻密な戦略家でありながら、優れたモチベーターとしての顔も持つ指揮官だ。
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)
インタビュー写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)