――そこからハリファックス（７部）へ行って、フリートウッド・タウン（５部）に移籍する。どちらでも得点を重ねて、とくにフリートウッド時代には５部リーグとはいえ、シーズンで31得点（36試合）という文句なしの結果を残した。そして2012年の夏に、100万ポンド（約１億7000万円）でレスターへとやってくるわけだ。当時のレスターはチャンピオンシップ（２部）で戦っていた。５部リーグからの凄まじいジャンプアップだよね。
 
「シーズン途中に『レスターがお前に興味を示しているぞ』と教えてもらった。そしてシーズンの最終節、４部への昇格が決まった日に監督とマネージングディレクターに呼ばれて、こう言われたんだ。『昇格させてくれてありがとう。だが君にとってはこれがウチでのラストゲームになる』と。俺は『え？　ああ、そうなの』という感じだった（笑）。
 
　そのあとでナイジェル・ピアソン（レスター前監督）と会って話をして、正式に移籍が決まったんだ。ナイジェルにはいまでも感謝してる。わざわざ会いに来てくれて、俺についていろいろ調べてくれてたのか、すごく詳しくてさ。俺を必要としてくれてるって熱意がビンビン伝わってきたよ。フットボーラーであれば、誰だって意気に感じる瞬間だと思うよ」
 
――でも、移籍１年目のチャンピオンシップでは苦しんだ。かなりの飛び級だったから、やはりチャレンジは容易ではなかった？
 
「まあ、ノンリーグからだからね。正直簡単ではなかったし、自分の能力を疑ったこと
もあった。タフなチャレンジになると覚悟はしてたけど、ここまで違うとは思ってもみなかった。フィジカルコンタクトもスピードも半端なかったし、精神的にも疲れ果てた。準備が不十分でなにもかもが上手くいかず、自信も失ってしまったんだ。
 
　だから俺は、レンタル移籍をさせてくれないかとガッファー（監督の俗称）に頼んだんだ。でも彼は、ここにいるべきだと言ってくれた。お互いにすべてを包み隠さずに意見をぶつけ合って、いつしか「俺はここでもやっていけるんだ」って気持ちになれた。しっかりコンディションを整えて、成功を掴むためにすべてを捧げようと誓ったんだ」
 
――それが２シーズン目のブレイクにつながったわけだね。
 
「俺自身、ゴールって結果（16得点）を残せたし、チームのプレミアリーグ昇格に貢献できたって自負もあった。苦しかった１年目に必死でトレーニングを積み重ねたからこそ、活躍できたんだと思う」
 
――さまざまな問題でピアソン監督は解任されてしまった。自分を連れてきてくれた恩師が去って、少なからず動揺したのでは？（※フロントとの意見の相違を理由に今シーズン開幕前に解任された）
 
「それは……ね。ナイジェルにとって俺の獲得はギャンブルだったと思うんだ。ノンリーグでしかプレーしていない選手をチャンピオンシップで、そしてプレミアリーグで起用したんだから。しっかり恩返しができたと、そう信じたい。
 
　彼の退団はたしかに悲しかったけど、これが現代フットボールなんだよな。出会いと別れは日常茶飯事。仕方ないさ」