【現地発】インテルの「豹変」がセリエAに「異変」を起こす!

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2017年12月07日

ユーベを叩けば一気にスクデットへの希望も。

就任1年目にしてチームを掌握し、攻守で機能性を高めたスパレッティ監督。さすがの手腕だ。写真:Alberto LINGRIA

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 今シーズンのインテルは、自陣からのリスタートではロングボールを蹴らず、最終ラインからパスを繋いで攻撃を組み立てる(ロングパス数はリーグ最少でナポリより少ない)。SBからウイングへの縦パスというサイド経由のルートだけでなく、最終ラインからセントラルMFを経由して一旦中盤でポゼッションを確立し、そこからサイドチェンジでウイングに展開して突破を仕掛けるというルートによって攻撃にバリエーションを持たせているのが、昨シーズンまでと大きく異なるところだ。
 
 中盤のポゼッションにおいては、トップ下から下がってきて局地的な数的優位を作り出すボルハ・バレロ、そしてパスを繋ぐだけでなくスペースがあればドリブルで一気に持ち上がる縦のダイナミズムを備えたマティアス・ベシーノという、フィオレンティーナから獲得した2人の新戦力が大きな役割を果たしている。
 
 このインテルの攻撃において最終的なターゲットとなってフィニッシュを一身に担うのが、今やヨーロッパ屈指のゴールマシンに成長したマウロ・イカルディ。ここまで16ゴール(PKは4つ)を挙げて得点王争いのトップを走るそのパフォーマンスは驚異的だ。
 
 出場15試合でシュート39本(PK除く)はリーグ5位だが、1位のエディン・ゼコ(63本)や2位のロレンツォ・インシーニェ(60本)と比べると決して多い数字ではない。しかしイカルディは、オープンプレーから放ったこの39本のうち31本を枠内に収め、12得点を挙げているのだ。総シュート数に対する枠内シュート率の79%、得点率の31%はいずれも驚くべき数字である。
 
 ここまで16試合で10失点というリーグトップの守備力を土台に、両ウイングの突破から作り出したチャンスをイカルディが高い確率でゴールに結びつける効率的な攻撃によって着実に勝ち点を積み上げてきた結果が、ナポリ、ユーベを上回っての単独首位というわけだ。
 
 ライバルがCLとの二足の草鞋を強いられているのに対して、週5日のトレーニングで十分な準備を重ねて試合に臨めるのもインテルの強み。スパレッティ監督の戦術がスムーズに浸透し、開幕からほどなくして明確なアイデンティティーを持ったチームが固まった理由もそこにある。
 
 12月9日に待っているのは、前節にナポリとの直接対決を制するなど相変わらず勝負強い王者ユーベとのイタリア・ダービー。インテルの今シーズンの目標はあくまでも4年ぶりのCL出場権獲得だが、敵地でユーベを破って突き放せばそのさらに上、スクデット狙いに向けて弾みがつく。ユーべ、ナポリとのハイレベルな三つ巴の攻防を続けてセリエAを盛り上げるためにも、健闘を期待したいところだ。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
 
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