病と闘う妻のために、なにがなんでも…。
―――ずっと楽しそうに話してくださっていますが、初めての海外生活、プライベートも含め、何かと苦労もあるのかと。
「うーん、私はそこまでないですね。妻の方が大変ですからね。実は最近、妻が病気で日本へ帰国したんです。検査したら悪性リンパ腫だと分かって。色々と考えると日本で治療した方が良いなと。子どもたちとも離れ離れになっていますし、辛いと思います」
―――そんなこととは知らずに、大変失礼しました。
「いやいや、我が家は皆で前向きですから! 妻はこっちでの生活を滅茶苦茶楽しんでいたんです。なので『早く治してバンコクへ行くからー!』と言っています。妻も日本で頑張っているので、戻って来るまでは娘と息子とこっちで力を合わせて頑張りますよ!」
―――親父の頑張りどころですね。
「そうなんです。実は私以上に妻がタイトルを欲していて。実は今までタイトルと縁がないんです。ナビスコカップは決勝で負けているし、天皇杯も散々で、メンバーインした試合は全部決勝で負けていて。ガンバが優勝した時は、決勝は出場停止で出られず、清水が優勝した時も、帯同していたのに当日ひとりだけベンチを外れたりとまったくで……。ゼロックススーパーカップでも何度も負けたし、国立で何回負けてるんでしょうね(苦笑)。自分が試合に出て掴んだタイトルって本当にないんですよ。妻は私に言わないですけど、それもすべて分かっていると思います。いまタイトルに手が届く位置に居るし、何が何でも獲りたいんです」
―――残り9試合、まさに“必勝態勢”ですね。
「本当に。そしたらこの前、ケインが話してくれたんです。『リーグ優勝して、ふたりでカップを掲げた写真を撮って、奥さんに送ろう』って。嬉しいですよね」
――◆――◆――
実はインタビューを打診した際に「娘も一緒に行って良いでしょうか? 迷惑は掛けないので」と言われていた。当日、話を聞いてすべてが繋がった。余談なのだが、パパに寄り添い付いて来た娘さんは、スラっとしたモデル体型、また英語が堪能な才女ときた。実に将来が楽しみである。
家族と選んだ海外挑戦、相当な覚悟のもと楽しんでいた。また腰が低く、相手への気配りも半端ない。そして彼が度々口にした『本当にツイている』と話す度に思ったこと、それは決して偶然ではない、日頃の積み重ねから形成された“必然”なのだと。周りが応援したくなる訳である。
最後までタイトル争いがもつれそうなタイ2部リーグ、エアフォースは最終戦を10月21日、カンボジア国境に程近い街“トラート”で戦う。カップを掲げ喜ぶ漢の雄姿を写真に収めたいと心の底から思い、どうにかならないものかと自らの手帳を睨んでみた。
■プロフィール
高木和道(たかぎ・かずみち)
1980年生まれ、滋賀県野洲市出身。元日本代表。県下の名門校・草津東高で活躍し、京都産業大へ進学するが、練習参加した清水エスパルスからのオファーを受け中退、プロの世界へと足を踏み入れた。その後、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、大分トリニータ、FC岐阜、ジュビロ磐田を渡り歩き、2017年にタイのエアフォース・セントラルFCへ移籍。クラブ4年ぶりのトップリーグ昇格を目指し奮闘中。
取材・文:佐々木裕介
「うーん、私はそこまでないですね。妻の方が大変ですからね。実は最近、妻が病気で日本へ帰国したんです。検査したら悪性リンパ腫だと分かって。色々と考えると日本で治療した方が良いなと。子どもたちとも離れ離れになっていますし、辛いと思います」
―――そんなこととは知らずに、大変失礼しました。
「いやいや、我が家は皆で前向きですから! 妻はこっちでの生活を滅茶苦茶楽しんでいたんです。なので『早く治してバンコクへ行くからー!』と言っています。妻も日本で頑張っているので、戻って来るまでは娘と息子とこっちで力を合わせて頑張りますよ!」
―――親父の頑張りどころですね。
「そうなんです。実は私以上に妻がタイトルを欲していて。実は今までタイトルと縁がないんです。ナビスコカップは決勝で負けているし、天皇杯も散々で、メンバーインした試合は全部決勝で負けていて。ガンバが優勝した時は、決勝は出場停止で出られず、清水が優勝した時も、帯同していたのに当日ひとりだけベンチを外れたりとまったくで……。ゼロックススーパーカップでも何度も負けたし、国立で何回負けてるんでしょうね(苦笑)。自分が試合に出て掴んだタイトルって本当にないんですよ。妻は私に言わないですけど、それもすべて分かっていると思います。いまタイトルに手が届く位置に居るし、何が何でも獲りたいんです」
―――残り9試合、まさに“必勝態勢”ですね。
「本当に。そしたらこの前、ケインが話してくれたんです。『リーグ優勝して、ふたりでカップを掲げた写真を撮って、奥さんに送ろう』って。嬉しいですよね」
――◆――◆――
実はインタビューを打診した際に「娘も一緒に行って良いでしょうか? 迷惑は掛けないので」と言われていた。当日、話を聞いてすべてが繋がった。余談なのだが、パパに寄り添い付いて来た娘さんは、スラっとしたモデル体型、また英語が堪能な才女ときた。実に将来が楽しみである。
家族と選んだ海外挑戦、相当な覚悟のもと楽しんでいた。また腰が低く、相手への気配りも半端ない。そして彼が度々口にした『本当にツイている』と話す度に思ったこと、それは決して偶然ではない、日頃の積み重ねから形成された“必然”なのだと。周りが応援したくなる訳である。
最後までタイトル争いがもつれそうなタイ2部リーグ、エアフォースは最終戦を10月21日、カンボジア国境に程近い街“トラート”で戦う。カップを掲げ喜ぶ漢の雄姿を写真に収めたいと心の底から思い、どうにかならないものかと自らの手帳を睨んでみた。
■プロフィール
高木和道(たかぎ・かずみち)
1980年生まれ、滋賀県野洲市出身。元日本代表。県下の名門校・草津東高で活躍し、京都産業大へ進学するが、練習参加した清水エスパルスからのオファーを受け中退、プロの世界へと足を踏み入れた。その後、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、大分トリニータ、FC岐阜、ジュビロ磐田を渡り歩き、2017年にタイのエアフォース・セントラルFCへ移籍。クラブ4年ぶりのトップリーグ昇格を目指し奮闘中。
取材・文:佐々木裕介