【昇格プレーオフドキュメント】「5トップ」と「走力」の結実――2012年・大分

カテゴリ:Jリーグ

週刊サッカーダイジェスト編集部

2014年11月29日

決勝ゴールが決まる直前に村井と林が見せた『走り』

大分のキーポイントとなった秘策の5トップ。試合後のベンチ前には作戦指示のボードが残っていた。 (C) SOCCER DIGEST

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 田坂監督は試合前日、秘策はあるのかという問いに、「考えていることはある」と答えていた。まさにその「秘策」といえる5トップの戦術がハマったわけだ。
 
 その策は実に見事だった。ただ、勝利を呼び込んだ最大の要因は、全力で走り切った選手たちの頑張りにこそあったはずである。「足が潰れたって構わない。この試合で引退するぐらいの覚悟で臨んでいた」(村井)
 
 林の決勝ゴールが生まれる直前、こんなプレーがあった。
 
 大分のゴール前からのリスタート。サイドの低い位置でパスを受けた森島が、縦にロングパスを放つ。抜け出した林がDFと競り合って、ボールを前に蹴り出す。そのボールは雨で濡れたピッチを滑り、ゴールラインを割りそうになる……。ところが林は決して諦めず、全力疾走で追いかけた。さらに林が追い付くのを信じて、村井もゴール前へと懸命に走り込んでいたのだ。
 
 林はラインぎりぎりでボールを止め、中央にクロスを放つ。そのボールを村井が身体を張って受けてチャンスになったが、相手DFのタックルでクリアされてしまった(あわやPKか、という場面に)。千葉でプレーしていたふたりが見せた、闘争心をむき出しにした意地の「走り」だった。
 
 この1プレーは、千葉のDF陣にボディブローのようにダメージを与えていた。背後を取られてはピンチを招くと感じた千葉の守備陣は、高めに最終ラインを設定する。そして「エアポケットを作ってしまった」(竹内)とオフサイドトラップのかけ損ねを誘発し、林の決勝ゴールが生まれたのだった。
 
 残り5分、5トップというダイナミックな戦術。それを昇華させたのは、大分が培ってきた原点とも言える「走力」にあったに違いない。それは来季、貴重なチームのベースになるはずだ。
 
取材・文:塚越 始(週刊サッカーダイジェスト)

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