【長友佑都】「ズタズタにされたんでね」。金髪に込めた想いと癒されない“ある傷”

カテゴリ:日本代表

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2018年06月14日

「ボクシングで言うと、思い切り鼻にパンチを入れられた」

4年前のブラジル大会では屈辱的な思いを味わった。写真:Getty Images

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 悔いを残したくない。長友を奮い立たせるのは、4年前の苦い記憶だ。
 
「やっぱり4年前のワールドカップであれだけ悔しい思いをして、この4年間引きずってきたわけじゃないけど、やっぱり傷は残っていた」
 
 特にショッキングだったのはコロンビアとのグループリーグ第3戦での敗戦。一時は1-1と追いつきながらも終わってみれば1-4と、プライドは木っ端微塵に砕け散った。
 
「ズタズタにされたんでね。お前ら、そんなんじゃ通用しねえよと。ボクシングで言うと、思いっきり鼻にパンチを入れられて、失神して倒れるくらいのレベルの試合だった。だからこそ、借りを返したいし、この4年間どういう気持ちで過ごしてきたかは彼らには分からないと思うから。それを強い気持ちでピッチにぶつけたいですね」
 
 もちろん、ワールドカップが甘くないことは十二分に承知している。だから、理想なんて求めない。
 
「ブラジル大会の時は理想ばかりを追い求めてしまって、結局ワールドカップの舞台で失敗したじゃないですけど、結果が出なかったので。僕はそれを経験して、理想ばかりでは勝てないことを知った。とにかく自分たちが下手だということを、自分たちが強くないということをまずはしっかりと認めたうえで 自分たちにできるサッカーを1人ひとりが100パーセント出し切るって、ただそれだけかなと」
 
 自分たちが下手だということを認める──。ここで思い出されるのが、8年前、南アフリカ・ワールドカップ前の事前合宿での田中マルクス闘莉王の言葉だ。
 
「日本らしいスタイル、パス回しとかもちろん理想は大切だけど、下手くそは下手くそなりに泥臭くならないと」
 
 この闘将の檄もあり、それまで不調だった当時の日本代表はワールドカップの本大会でベスト16進出と躍進を遂げる。その原動力となったのは、戦う、走る、そうした根本的なファクターだった。今になって、改めて、長友は闘莉王ら大先輩の行動や言動を偉大だと感じている。
 
「今それが身に染みています。俊さん(中村俊輔)のあの行動、あの時の闘莉王さんの言動、そのすべてが染み渡るじゃないけど。自分にやれることはサッカー以外でもあるというのは感じているんで。あの時、どういう想いでね、ベテランの選手たちが僕たちに接してくれたのか、今になって痛いほど分かります」
 
 ロシアのカザンに入ってからの盛り上げ方についてはまだ「答が見つからない」という長友だが、すでに戦闘態勢には入っている。
 
「ただ、自分自身は自分にやれる最善のことをやっているつもりだしね。それを全部やり尽くして、それで出た結果ならなんでも受け入れられると思っていて。だからこそ、金髪もそうだし。それはチームのためでもあるし、自分のためでもあるし。もちろん、プレッシャーもそれ以上に掛かるし。でも、そのプレッシャーに打ち勝って、最高に躍動したいなという気持ちが強い」
 
 こうした言動を聞いていると、今の長友はもはや代表チームの揺るがない精神的支柱だ。闘莉王の精神はこの男の心にしっかりと刻み込まれている。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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