正直な話、トップチームの試合を観に行く子は多くない
――日本はU-15世代くらいまでは世界でも対等に戦えるのですが、それより上の年代へ進むに連れて徐々に埋まらない差が生じてしまいます。問題は何だと考えますか?
「日本の育成世代を指導したことがない私にとっては非常に難しい質問ですね。ベルギーの育成システムでは1歳ごとにチームが編成され、国内は勿論、隣国のクラブとも絶えずしのぎを削り合える環境があります。もしかすると島国である日本では、その辺りの環境差が理由となって違いが生じてしまっているのかも知れませんね。やはり、環境は大事です。ただし、私たちにも問題がない訳ではない。欧州のファーストグループに入れるよう、指導者は皆でその問題と向き合い、真剣に考えています」
――なるほど。あなたが指導する選手たちも週末はコンスタン・ヴァンデン・ストックスタディオン(RSCアンデルレヒトのホーム)へと足を運ぶことでしょう。常に欧州のハイレベルな試合を身近に観戦できる環境に嫉妬心すら覚えます。羨ましい限りです。
「でも正直な話、私の選手たちでトップチームの試合を観にスタジアムへ行く子は多くないんです。実はいまさっき、FC東京との試合(1-3で敗戦)後に選手へそうしたことを話したところでした。『君たちは仲が良過ぎてしまい、プレーする上ではネガティブな要素になっている。フットボールで勝ちたいのであれば、トップチームの試合を数多く観て、同じポジションの選手をよく観察するんだ。彼らはチャンピオンズ・リーグやヨーロッパリーグでも戦い、勝つために試合中でもチームメイトと意見をぶつけ合っているぞ』とね」
――それは意外な話ですね。いま、そのトップチームの10番は日本人です。彼についてはどのような印象をお持ちですか?
「モリオカ(森岡亮太)は素晴らしい技術と戦術理解能力を持ち合わす優れた選手です。しかし守備意識が少し薄いのでは、とプレーを観ていて感じます。どんなタレントでも現代サッカーにおいて、守備を軽視することはできないですからね。でもこれはあくまでも私の意見ですよ(笑)」
――◆――◆――
育成に投資し、多くの逸材を輩出し続けるRSCアンデルレヒトにあっても、ここ30年ほどは国際大会で成功を収められずにいる。そこには都度ビッグクラブの引き抜き合戦から逃がれられない育成クラブの宿命があり、欧州が凄まじい戦場であることを改めて実感するとともに、今回育成関係者の生の声を通じてフットボール先進国にも問題はあるものだと知る機会となった。
あと1か月に迫ったワールドカップ。ベルギー代表には、RSCアンデルレヒトと所縁ある選手も数多く選ばれることだろう。またひとつ気になる国が増えてしまったことで、時差による睡魔との格闘をより一層強いられることになる。
取材・文●佐々木 裕介(フリーライター)
「日本の育成世代を指導したことがない私にとっては非常に難しい質問ですね。ベルギーの育成システムでは1歳ごとにチームが編成され、国内は勿論、隣国のクラブとも絶えずしのぎを削り合える環境があります。もしかすると島国である日本では、その辺りの環境差が理由となって違いが生じてしまっているのかも知れませんね。やはり、環境は大事です。ただし、私たちにも問題がない訳ではない。欧州のファーストグループに入れるよう、指導者は皆でその問題と向き合い、真剣に考えています」
――なるほど。あなたが指導する選手たちも週末はコンスタン・ヴァンデン・ストックスタディオン(RSCアンデルレヒトのホーム)へと足を運ぶことでしょう。常に欧州のハイレベルな試合を身近に観戦できる環境に嫉妬心すら覚えます。羨ましい限りです。
「でも正直な話、私の選手たちでトップチームの試合を観にスタジアムへ行く子は多くないんです。実はいまさっき、FC東京との試合(1-3で敗戦)後に選手へそうしたことを話したところでした。『君たちは仲が良過ぎてしまい、プレーする上ではネガティブな要素になっている。フットボールで勝ちたいのであれば、トップチームの試合を数多く観て、同じポジションの選手をよく観察するんだ。彼らはチャンピオンズ・リーグやヨーロッパリーグでも戦い、勝つために試合中でもチームメイトと意見をぶつけ合っているぞ』とね」
――それは意外な話ですね。いま、そのトップチームの10番は日本人です。彼についてはどのような印象をお持ちですか?
「モリオカ(森岡亮太)は素晴らしい技術と戦術理解能力を持ち合わす優れた選手です。しかし守備意識が少し薄いのでは、とプレーを観ていて感じます。どんなタレントでも現代サッカーにおいて、守備を軽視することはできないですからね。でもこれはあくまでも私の意見ですよ(笑)」
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育成に投資し、多くの逸材を輩出し続けるRSCアンデルレヒトにあっても、ここ30年ほどは国際大会で成功を収められずにいる。そこには都度ビッグクラブの引き抜き合戦から逃がれられない育成クラブの宿命があり、欧州が凄まじい戦場であることを改めて実感するとともに、今回育成関係者の生の声を通じてフットボール先進国にも問題はあるものだと知る機会となった。
あと1か月に迫ったワールドカップ。ベルギー代表には、RSCアンデルレヒトと所縁ある選手も数多く選ばれることだろう。またひとつ気になる国が増えてしまったことで、時差による睡魔との格闘をより一層強いられることになる。
取材・文●佐々木 裕介(フリーライター)