なぜ松井大輔は36歳での再渡欧を決断したのか「いればこそ味わえる醍醐味がある」

カテゴリ:海外日本人

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2018年01月12日

「例えば外国人枠。その厳しさは行ってみないと分からない」

2004年、松井の冒険はフランス西部でスタート。入団当初は無名だった若武者はやがて、サポーターに“ル・マンの太陽”と称されるほどのカリスマティックな人気を誇った。(C)Getty Images

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 今回、松井はポーランドの2部クラブを選んだ。J1で、磐田でプレーしていたほうが環境レベルは高かったのではないか? そもそもの考え方が違うと言う。
 
「そういうのはすごくよく訊かれるけど、行ったことがないひとが語るのはおかしい。訊く前に、自分で実際に見たらどうかと言いたいですよ。ヨーロッパにいれば実感する。日本はいまでも遅れているなと。個々の能力はたしかに低いかもしれないけど、じゃあ例えば外国人枠があるなかで、チームでひとりの日本人としてどうプレーするか。その厳しさは行ってみないと分からない。ひょっとしたら、ヨーロッパで自分の価値が跳ね上がるかもしれない。いればこそ味わえる醍醐味やし、その刺激なり挑戦の場を与えてもらってるだけでもありがたいんですよ」
 
 松井が先鞭をつけたのだ。いまや欧州4大リーグの下部クラブやマイナー国のクラブでスタートを切る選手は珍しくなく、さまざまなアプローチがなされている。
 
 スペイン2部のテネリフェから1部のヘタフェへステップアップした柴崎岳、東欧のクラブを転々として活躍し、日本代表に選ばれるまでに台頭した加藤恒平、ルーマニアのアストラで通算13年目を迎える瀬戸貴幸はもはやクラブのアイコンで、ヨーロッパリーグにも参戦中だ。スペイン2部のヒムナスティックには鈴木大輔がいて、現在は宇佐美貴史もドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフで研鑽を積んでいる。そしてこの冬、井手口陽介がガンバ大阪からイングランドのリーズ・ユナイテッドに移籍し、すぐさまスペインのクルトゥラル・レオネサにローンで貸し出された。どちらも2部リーグのクラブだ。
 
 孤高のファンタジスタは、目を輝かせながらこう語る。
 
「日本で37歳になって終わってくんじゃなくて、サッカーだけで結果を残せばなにかを得られる、ヨーロッパの場にいるからこそワクワクできる、そういう環境に身を置けるのはホンマに幸せなことなんです」
 
<つづく>
 
取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

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PROFILE
まつい・だいすけ/1981年5月11日生まれ、京都府京都市出身。地元の藤森中から名門・鹿児島実高に越境入学し、メキメキと頭角を現す。3年時には高校選手権で準優勝を果たした。卒業後は京都サンガに入団。世代別代表でも持ち前の技巧とドリブルで存在を示し、2004年アテネ五輪ではナンバー10を背負う。同大会終了後に欧州挑戦をスタート。フランス2部のル・マンでスターダムを駆け上がり、サンテティエンヌ、グルノーブル(ともにフランス)、トム・トムスク(ロシア)、ディジョン(フランス)、スラビア・ソフィア(ブルガリア)、レヒア・グダニスク(ポーランド)と渡り歩いた。2014年春にジュビロ磐田に移籍し、10年ぶりのJリーグ復帰。3年半プレーし、今年8月にふたたび欧州へ旅立ち、現在はポーランド2部のオードラ・オポーレに籍を置く。日本代表では31試合・1得点の記録を残し、2010年南アフリカ・ワールドカップでベスト16進出に、翌年のアジアカップでは優勝に貢献した。Jリーグ通算211試合・25得点(うちJ2は116試合・18得点)。175センチ・68キロ。
公式ウェブサイト=http://matsuidaisuke.jp/
サッカージャンキー=http://soccerjunky.com/

(C)Yuji ARAKAWA

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