攻守においてそれぞれがやるべきプレーとは!?
では、ハインケス就任でバイエルンのサッカーはどのように姿を変えるのだろうか。
引き出しが特別、多いわけではない。だが、必要なプレーを徹底させることには長けている。5年前、守るための動きをしたことがなかったフランク・リベリとロッベンに、守備の大切さを伝えたのが、ハインケスだった。
今のバイエルンでは、多くの選手がそれぞれ、自分のプレーばかりを考えてしまっている。あれほど守備にも奔走していたロッベンが、ボールを失うと足を止めるようになってしまった。
何のために、なぜ、どこまで守備をやらなければならないのか――。まずは攻守における、それぞれのやるべきプレーの整理がなされなければならない。
「ロベリ」にはともに、5年前ほどの打開力があるわけではない。だがその分、味方を使うプレーは上手くなっている。ならば、どのような組み合わせで、どこを強化するのが最適なのかを詰めていく必要がある。リベリを起用するなら、単独でサイドに張らせるのではなく、周りで動ける選手も必要になる。
せっかく獲得したハメス・ロドリゲスや、コランタン・トリソの良さを活かすことも大切だ。
また、昨シーズン、MVP級の活躍を見せたチアゴ・アルカンタラの復調も必須である。ここでも、アスレティック・ビルバオやレアル・マドリーでの指導歴があり、スペイン語や英語を話せるハインケスの存在は、非常に大きな意味を持つ。
そして何より、バイエルン・ファンの興味は「(トーマス・)ミュラーを蘇らせることができるか」という点に向けられる。
一昨シーズンには自身最多となる20ゴールを挙げる大活躍ぶり見せたが、アンチェロッティ政権下では出場36試合でわずかに6ゴール。大事な試合で控えに回ることも多く、不満を燻らせていた。
だが、水曜日に行なわれたトレーニングでは、自由を与えられ、かつての輝きを取り戻そうと必死に汗を流していた。相手守備の嫌がるところへ神出鬼没の動きを見せるミュラーの復調は、バイエルンの再浮上には欠かせない。
ハインケスの監督就任が決まると同時に、多くの選手・指導者からの祝福のメッセージがSNSに溢れていた。誰からも高く評価されるその指導力で、王者としての輝きを取り戻すことができるか。初陣となる土曜日のフライブルク戦では、どんな試合を見せてくれるか。非常に楽しみだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
引き出しが特別、多いわけではない。だが、必要なプレーを徹底させることには長けている。5年前、守るための動きをしたことがなかったフランク・リベリとロッベンに、守備の大切さを伝えたのが、ハインケスだった。
今のバイエルンでは、多くの選手がそれぞれ、自分のプレーばかりを考えてしまっている。あれほど守備にも奔走していたロッベンが、ボールを失うと足を止めるようになってしまった。
何のために、なぜ、どこまで守備をやらなければならないのか――。まずは攻守における、それぞれのやるべきプレーの整理がなされなければならない。
「ロベリ」にはともに、5年前ほどの打開力があるわけではない。だがその分、味方を使うプレーは上手くなっている。ならば、どのような組み合わせで、どこを強化するのが最適なのかを詰めていく必要がある。リベリを起用するなら、単独でサイドに張らせるのではなく、周りで動ける選手も必要になる。
せっかく獲得したハメス・ロドリゲスや、コランタン・トリソの良さを活かすことも大切だ。
また、昨シーズン、MVP級の活躍を見せたチアゴ・アルカンタラの復調も必須である。ここでも、アスレティック・ビルバオやレアル・マドリーでの指導歴があり、スペイン語や英語を話せるハインケスの存在は、非常に大きな意味を持つ。
そして何より、バイエルン・ファンの興味は「(トーマス・)ミュラーを蘇らせることができるか」という点に向けられる。
一昨シーズンには自身最多となる20ゴールを挙げる大活躍ぶり見せたが、アンチェロッティ政権下では出場36試合でわずかに6ゴール。大事な試合で控えに回ることも多く、不満を燻らせていた。
だが、水曜日に行なわれたトレーニングでは、自由を与えられ、かつての輝きを取り戻そうと必死に汗を流していた。相手守備の嫌がるところへ神出鬼没の動きを見せるミュラーの復調は、バイエルンの再浮上には欠かせない。
ハインケスの監督就任が決まると同時に、多くの選手・指導者からの祝福のメッセージがSNSに溢れていた。誰からも高く評価されるその指導力で、王者としての輝きを取り戻すことができるか。初陣となる土曜日のフライブルク戦では、どんな試合を見せてくれるか。非常に楽しみだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。