不参加の黒田剛監督に代わって今遠征で指揮を執る上田大貴コーチは、試合を次のように振り返った。
 
「本当にナイスゲームでした。３年生はこの試合が本当に最後なので、100パーセントで戦って、楽しもう、そして勝とうと言っていましたが、それを選手たちが最高に体現してくれたと思います」
 
　今遠征はGK以外すべて３年生で、すでにJクラブに合流したGK廣末陸（３年／FC東京内定）とMF高橋壱晟（３年／ジェフ千葉内定）に加えて、MF郷家友太（２年）、DF小山内慎一郎（２年）など下級生の２冠メンバーも不参加。そんな中、ゴールを決めた中山、誰よりも響く大声でチームを鼓舞した新井は長くBチームに甘んじていた選手であり、黒田は半年前の怪我から今遠征で復帰し、そして伊藤は前述した通りマネージャーだった。それでもプレミアリーグや選手権でも披露した青森山田の堅守はまったく崩れず、総合力の高さを見せ付けた。
 
「このメンバーでやるのはたぶん一生でも最後なので、まずこの日は全員をピッチに立たせてやりたかった。新井も声の大きさばかりに目がいきがちですが、小さな身体で大きな選手によく対応できていました。ペナルティーエリアに入れない、ボールを隠すとうウチの守りのコンセプトを、選手権ではベンチやスタンドだった選手が体現してくれた。チームとして勝てたと思います」
 
　上田コーチはパワー＆スピードの差を組織力と対応力で埋め、ナイキアカデミーに０-０、ストラカンFFに４-０と好成績を収めた今遠征をこう振り返る。
 
「気候、芝、食事、時差など日本とはまったく異なる環境が初めての選手が多い中、徐々に彼らはそれに適応していった。サッカーも同じで、相手にパワーとスピードで最初はやられるけど、身体を寄せるなど次はしっかり対応していた。学習能力が高いですよね。サイドとフィジカルがある外国人選手に対して、日本人もある程度は組織力で対抗できることが分かりました。ただ、トップスピードでのボールコントロールなど個の力はまだまだ海外選手のほうが上で、上のレベルにいけばいくほどその点が最大の違いになる。連携だけではなく、個の力をもっともっと伸ばしていかなければいけないと感じました」
 
　組織力と連動性に定評のある青森山田に、さらに個の力が付けばそれこそ鬼に金棒だろう。３年生はこの試合を最後に引退するが、上田コーチと下級生GKから青森山田にはこの経験が必ずや還元されるに違いない。
 
　青森山田の一行は現地時間21日にイギリスを出国し、22日には日本に帰国する予定だ。
 
取材・文：白鳥大知（サッカーダイジェストWEB）

【青森山田PHOTO】ストラカンFFを一蹴！ 全選手から歓喜のシーンまで！