【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十七「監督への道のり」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年12月04日

選手時代の名声やタレント活動での人気は一切通用しない。

モウリーニョを筆頭に、プロサッカー選手としては大成しなかった名監督も多い。選手としての経歴はひとつの長所であり、監督の絶対条件ではない。写真:Getty Images(サッカーダイジェスト写真部)

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 周知のとおり、ジョゼ・モウリーニョはプロサッカー選手の経歴がないが、監督としての技量を高めてきた。誤解されがちだが、選手としての経歴はひとつの長所であって、監督の絶対条件ではない。アリーゴ・サッキ、アルベルト・ザッケローニ、ラファエル・ベニテス、ファンマ・リージョ、アンドレ・ヴィラス・ボアス、レオナルド・ジャルディムなどは名将に数えられるが、プレーヤーとしてはアマチュアレベルで終わっている。
 
 そもそも、欧州や南米では指導者をひと括りにしない。監督は監督であり、コーチはコーチ。監督がチームを去ってコーチが昇格するのは、ある種の禁じ手であり、それまで従っていた監督と縁を切るような覚悟が必要になる。それほど監督というポストは独立しているのだ。
 
 一方で、Jリーグにおいてはプロ野球の影響なのか、引退後は解説者をし、ライセンスを取ったらいきなりトップクラブの監督になるケースもしばしば見られる。あるいは、コーチが監督の陰口を叩き、GMや一部選手を取り込んで取って代わるという“謀反”や、J3にチームを落としかけていた監督がJ1の監督となって、そこを降格させるヘンテコな話もある。さらに言えば、Jリーグで失敗を繰り返した監督が、なでしこリーグを受け皿にする光景には悲哀と滑稽さすら漂う。
 
 これはJリーグのクラブ首脳が、サッカー監督を野球監督と同様に捉えている罪と言えるかもしれない。
 
<監督は監督として結果を残してきてこそ覚悟が生まれ、選手のリスペクトも得られる>
 
 それがプロサッカー界の不文律であり、選手時代の名声やタレント活動での人気は一切通用しない。また、それがまかり通る社会では、世界に打って出た時に勝てるはずもないだろう。「井の中の蛙、大海を知らず」ということになる。
 
 サッカー監督とはいかにあるべきか?
 
 それを日本サッカーも問い直す時かもしれない。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
 
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