序盤からペースを掴み、いくつかの決定機を迎えながらも、日本はなかなかゴールを奪えずにいた。
 
　浅野拓磨の一撃はポストを叩き、遠藤航のヘッドは枠を捉えられず、中島翔哉のシュートはミートし切れず、ネットを揺らせない。
 
　攻めながらも、ゴールが遠い。そんな閉塞感を打ち破ったのが、４-２-３-１の２列目左サイドで先発した、背番号８だった。
 
　それまでの野津田岳人は、どちらかというとピンチを招くミスが散見されるなど、今ひとつ流れに乗り切れていなかった。
 
　しかし36分、遠藤から左サイドで高い位置を取っていた亀川諒史にボールが渡り、亀川から鋭いクロスが入ると、空いたスペースに素早く入っていき、利き足ではない右足でダイレクトに流し込んで待望の先制ゴールを奪ってみせた。
 
　ゴールが生まれたのは、浅野のフォローもあった。
 
「拓磨が最初、ニアで潰れてくれて、自分のスペースを空けてくれた。そこに入っていこうと思ったし、カメ君（亀川）もそこが見えていたと言ってくれたので。感謝したいです」
 
　浅野とのコンビネーションでは、「拓磨が持ったら、自分が追い越して、というのはイメージしていますし、お互い分かり合っている部分がある」と手応えを口にする。
 
　また、試合前には佐藤寿人からLINEで連絡があったという。
 
「貪欲に狙っていけ、と言ってくれたので狙っていきました」
 
　所属する広島のチームメイトの後押しもあり、「なによりも結果が欲しかった」との想いで挑んだコスタリカ戦で、見事にゴールを決めることができた。
 
　ゴール以外でも特筆すべきは、セットプレーのキッカーとしての活躍だ。
 
　１点を争う厳しい戦いが予想される最終予選（2016年１月）を見据えれば、セットプレーは貴重な得点源となるはず。この試合、CKもFKもキッカーを任されていた野津田は、精度の高いキックでチャンスを作り出していた。本人も「感触は悪くなかった」と振り返るが、ただ納得はしていないようだ。
 
「あれだけセットプレーがあって、１本はアシストしなければいけない。武器にしていきたい気持ちはあるので、もっともっと質を上げていきたい」
 
　出場した70分間の全体のパフォーマンスを振り返れば、決してパーフェクトな内容ではなかった。しかし、要所でゴールチャンスを演出し、実際に決定的な仕事をこなしてみせた。
 
　最終予選で求められるのは、なによりも“結果”だ。野津田がそれを、数少ない実戦の舞台で体現したのは間違いない。
 
取材・文：広島由寛（サッカーダイジェスト編集部）