もちろん日本だけのプレーで判断すれば、前半に中盤を支配した柴崎、冷静に先制点を決めた本田、持ち前のテクニックで決定機を演出した宇佐美ら、目を引く活躍をした選手は少なからずいた。チームとしても、3月シリーズに続き縦に速い攻撃を意図的に繰り出しており、ハリルイズムは確実に浸透しつつある印象を受けた。
しかし一方で、日本が主導権を握れたのは単にイラクの戦うスタンスが温すぎたからと、そんな見方もできた。例えば開始5分に先制した場面では、結果的にアシストする柴崎へのプレスも、得点する本田への警戒心もほとんどなかった。
この日のイラクはまさに「お客さん」で、16日から始まるワールドカップ・アジア2次予選に向けたスパーリングパートナーとしては不十分だった。
おそらく今回のアジア2次予選で、イラクのように中途半端にラインを上げてくるチームはないだろう。最終予選に勝ち上がるうえでは、ベタ引きする相手をどう攻略するかがひとつのポイントになるはずで、その意味でイラク戦はサンプルにならなかった。
■今後のスケジュール(日本サッカー協会発表) | |
日付 | カテゴリー/対戦国(H&A) |
15年6月16日(火) | W杯アジア2次予選/シンガポール(H) |
8月2日(日) | 東アジアカップ/北朝鮮(N) |
8月5日(水) | 東アジアカップ/韓国(N) |
8月9日(日) | 東アジアカップ/中国(N) |
9月3日(木) | W杯アジア2次予選/カンボジア(H) |
9月8日(火) | W杯アジア2次予選/アフガニスタン(A) |
10月8日(木) | W杯アジア2次予選/シリア(A) |
11月12日(木) | W杯アジア2次予選/シンガポール(A) |
11月17日(火) | W杯アジア2次予選/カンボジア(A) |
16年3月24日(木) | W杯アジア2次予選/アフガニスタン(H) |
3月29(火) | W杯アジア2次予選/シリア(H) |
N=中国で開催予定。 |
幻滅させられたのは、なにもイラクのプレーぶりに対してだけではない。66分以降の日本の戦い方も酷かったと言える。
本田、香川、宇佐美に代わり、3人揃って途中出場した永井、原口、武藤がボールを持てば「俺が、俺が」と言わんばかりのアピール合戦。シュート0本に終わった大迫が試合後に「みんながみんなゴール前に入ってきて……。スペースがなかった。顔を出してパスをもらおうと思っても、良いスペースがありませんでした」と苦笑いしながら話したように、ゴール前では“エゴによる交通渋滞”が起きていたのだ。
親善試合、しかも3-0とリードすれば、アピールしたい気持ちは多少なりとも理解できる。とはいえ、彼らのアピール合戦は「チームこそスター」と明言しているハリルホジッチ監督のスタンスに合致するものではない。むしろ、チームプレーに背く行為のように映った。
このアピール合戦については見解が分かれるところだろう。ただ、見逃せなかったのは、85分に投入された直後の山口のプレー。エリア付近までドリブルで持ち込み、良いタイミングで最前線の大迫にスルーパスを送ったあのプレーこそ、“程良いエゴ”と“協調性”の両方がブレンドされたプレーではなかったか。