【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の十一「役に立つ技術と立たない技術」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年03月26日

日本で育った選手は、自分の武器を出せない場合が少なくない。

スカウティングの定石どおり、突出した個を持つ選手を代表に選出したハリルホジッチ監督。問題は、そこから先のディテールをどう突き詰めるかだ。(C) SOCCER DIGEST

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 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表が、3月27日のチュニジア戦でいよいよ“発進”する。
 
 その日本代表メンバー発表においてひとつ特徴的だったのは、名古屋のFW永井謙佑の選出ではないだろうか。
 
 偶然、視察したナビスコカップの試合で、ほぼ直感的に選んでいる。圧倒的な足の速さというのは伝わりやすいのだろう。そもそも、ハリルホジッチはアルジェリア代表監督としてソフィアン・フェグーリ、アブデルムメンヌ・ジャブ、ヤシン・ブライミのような走力のある選手を好んで用いており、驚くには値しない。
 
 しかし、問題はそこからの話だろう。
 
 ハリルホジッチは、群を抜いたダッシュ力を持つ永井に興味を持ったが、その武器に相応するパス、コントロール、シュートの質があるのか――。
 
 スカウティングにおいて、突出した能力を持っている選手を評価し、そこからディテールを追うのは定石だが、日本で育った選手というのは、武器があってもそれを試合のなかで出せない場合が少なくない。
 
 例えばリーガ・エスパニョーラのコルドバがハーフナー・マイクを獲得した時、そのヘディングと意外なボールテクニックに周囲は目を丸くした。
 
「かなり期待できる」
 
 スカウティング能力の高いスペイン人でもそんな評価を下したが、筆者は疑問を呈していた。なぜなら、オランダではゴール前で動き直さなくても、長身めがけてクロスが飛んでくる。しかしスペインでは、しっかりとマークを外さない限りパスは来ない。
 
 案の定、ハーフナーはゴール前で待ち構えるだけで、周囲との連係を欠き、ポジションを失っていった。プレースタイルとレベルの違いに適応する必要があったわけだが、それができなかったのである。
 
 結果的に、高さや足技は宝の持ち腐れだった。言い換えれば、武器の部分では評価すべきものがあったが、その武器を出すことができなかったのだ。
 
<持っているんだから、出せるだろう!>
 
 スペイン人たちは憤慨気味に不思議がったものだが、前提において論理は崩れていたのである。
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